Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    n5_jt4

    @n5_jt4

    自分だけが楽しい話を垂れ流すbot。
    溜まったら支部にもまとめる予定

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💞 🍙 🍻
    POIPOI 64

    n5_jt4

    ☆quiet follow

    【鯉月予定】ふぇいとパロ導入。続くかは謎…といつも言ってる。

    #鯉月
    Koito/Tsukishima

    ふぇいとパロ 暗がりに一人の男の荒い息だけが響く。
     辺りは血の海で、人だった残骸が多く転がっている。
     彼はまだ肉塊にはなっておらず人の形を保ってはいるものの、近いうちにそれらの仲間入りをしてしまうのは自明の理だった。
     どうせいつ死んでもおかしくない捨てた命だ。
     やっと楽になれる。
     死は救済。
     地獄は終わる。
     決死隊の人間は皆そう言われて育てられる。
     死ぬために生きる。男も例に漏れずそうやって信じて生きてきた。
     なのに、何故だろう。
     救いに手を伸ばすのが怖くなってくる。
     生きたい、と生物の本能が人間の理性を押しのけて叫んでいた。
     そうは思っていても、重症な我が身。
     何もしなければ一日保たないのは彼自身理解している。
    「……は、ぁ……ああ、ろくでもないな」
     多くを殺し続けた我が身を、今更可愛いと、惜しいと思うものなのか。
     広い会議室の中に転がる人間だった塊。
     静かなその室内には、時計の針の音だけが小さく響いていた。
     しばらくして意識が泥に沈みそうになる頃、ふと温かい感覚に目を必死に開く。
    (なんだ……?)
     血の海に円形の何か複雑な模様が光の筋として浮かび上がる。
     体の痛みとは別に、手の甲が刺しこむように痛んだ。
    (次から次へと)
     内心で悪態をつくも、声に出すには厳しい。
     一気にその光の筋が纏まり、カメラのフラッシュを強くしたような眩い光になる。視界が奪われるようなそれに目が眩む。
     反射的に片手の甲を目元に押し付けるがあまり効果は無かった。白んだ視界に一度目を伏せる。
     ぱしゃり。
     自分しか居ない空間に血溜まりを進む音がした。
    (……追手か)
     制圧のためのフラッシュ弾だったのかと身構えるが、満身創痍な男は既に無抵抗な肉塊だ。
     悪運尽きたかと奥歯を噛みしめるが、彼へ歩み寄ってきた足音は少し離れた地点で止まる。
    「此度も地獄か、変わらんな」
     男の声。
     ようやく慣れてきた目で姿を確認する。
     長い外套を纏った、見た目は軍人だろうか。長身の男、知らない姿だった。
    「そこのお前。お前が私のマスターか」
     切れ長の目で見定めるように睨んでくる男は、10人に問えば8人は頷くであろう眉目秀麗な容姿だった。一部、眉毛に特徴はあるものの整っている。
    「……っ、ます、たーって、何の話だ」
    「ふん、なるほど正式な魔術師ではないか。まあいい。喚ばれたからには力になってやろう」
     言っている意味がさっぱりわからず、男はその長身を呆然と見つめる。
    「本来はセイバークラスで喚ばれるのだが、今回は何故かルーラー、エクストラクラスで喚ばれている。真名は伏せさせてもらおう、ルーラーと呼ぶがいい。お前の名は?」
     此方の理解が追いついていないのを、このルーラーと名乗る男は恐らく理解していない。
     本当はこのまま沈んでしまいたかったのだが、男はなんとか光の出処へ手を伸ばして口を開いた。
    「つきし、ま……だ」
     伸ばした手が掴み返される。幻ではない体温に体の力が抜けそうになった。
     生きたいと言う、本能が勝ってしまった瞬間だった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏☺☺💘👍👏👏👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works