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    むつき

    @mutsuki_hsm

    放サモ用文字書きアカウントです。ツイッターに上げていた小説の収納庫を兼ねます。

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    カトブレパス+シュクユウ+主人公
    街中のコスプレイベントに行く話

    #東京放課後サモナーズ
    tokyoAfterSchoolSummoners
    #カトブレパス
    #シュクユウ

    交流 サモナーとの待ち合わせ場所まで駆け寄ってきたシュクユウは、すでに頬を紅潮させていた。
    「きょうは、友達を紹介してくれるんだよね?」
    「そう、他校の子だよ。高校生」
    「おれ、仲良くできるかな?」
     無意識のうちの癖なのか、カメラのグリップをぎゅっと掴む。いつもながら手入れの行き届いた、シュクユウの宝物だった。
     心配することないよ、とサモナーは力強く励ます。
    「にーちゃんが言うなら大丈夫だよね! えへへっ」
     こぼれるような笑顔が返ってくる。見つめ合い、頷き合った。
    「それで、今日のイベントっていうのは、この辺りでやってるの?」
     サモナーに促されて歩きながら、辺りを見渡す。駅から歩いてほんの数分。道の両側に路面店が立ち並び、ぶらぶら歩いてショッピングを楽しむにはうってつけのエリアだ。友だちと並んで楽しそうに話している人や、たくさんのショップバッグを手から下げた人たちが歩道に溢れている。
    『カメラを持ってくるといいよ。面白いスクープとか、何か素敵な写真が撮れるかも』
     大好きなサモナーがそう言って誘ってくれたからとても楽しみにしていたのに。じゅうぶん賑わっているけれど、通り過ぎていく人々もお店も、特に変わったところはない。何か特別なイベントをやっているようには見えなかった。
     困ったように眉尻を下げる。そんなシュクユウへ、サモナーは微笑ましそうな視線を投げかけた。
    「イベントをやってるのは、もうちょっと向こうなんだ。でもイベントエリアで待ち合わせをすると、人が多くてお互い全然見つけられないと思うから……」
     そんな風に話しながら交差点を曲がる。途端、シュクユウの目に飛び込んできたのはたくさんの色彩だった。
     人それぞれが持つきらきらした光に加え、服も髪も、メイクもみな個性的だ。中にはちょっと古風だったり、ものものしい恰好をしたりしている人もいる。
    「コスプレイベントの日なんだって。俺も友達から教えてもらったから、詳しくは知らないんだけど……」
     車両通行止めにしているらしく、車道にもいっぱいに人があふれている。誰も彼も表情を輝かせ、楽しそうに笑いさざめいていた。
    「そのお友達が、今日紹介してもらえるひと?」
    「そうだよ。このコンビニの前で待ち合わせの約束をしてるから、もうじき来ると思う」
     シュクユウへの説明が終わらないうちから、名前を呼ばれてサモナーは振り返る。人混みの中、サモナーに向かって手を振っているのはカトブレパスだった。見慣れない恰好やメイクをしているのは、コスプレ中だからだろう。
     誰も彼もが個性的なコスプレをしている中、カトブレパスの姿はよく目立っていた。上背があって、体格もいいし、目鼻立ちも整っている。けれどそれだけではなく、彼のコスプレには人目を引くものがあった。
     華やかなオーラをこぼしているカトブレパスの姿に、シュクユウは釘付けになっていた。
    「ごめんなさい、待たせてしまいましたよね」
    「ううん、大丈夫。着いたばっかりだし、おしゃべりしてたから」
    「そうですか? それなら良かったんですが……。あ、こちらがお友だちですね」
     シュクユウの前に立ったカトブレパスは、ふんわりとした笑顔を浮かべる。コスプレしているキャラクターの笑い方ではなく、彼本来の、優しくてあたたかい微笑み方だった。
    「はじめまして。僕、カトブレパスっていいます」
    「は、はじめましてっ。おれ、シュクユウです」
     緊張のあまり拳を握りしめながら、シュクユウは背筋を伸ばして自己紹介をした。少し声がひっくり返りそうになってしまったけれど、はきはきと挨拶できたはずだ。
     「よろしくお願いします」と微笑むカトブレパスは、ふとシュクユウの手元に視線を落とした。
    「わあ、大きなカメラですね」
    「シュクユウは、うちの学園の写真部に入ってるんだ」
     横からサモナーが紹介をする。「スクープとか、ひとりで取ってくるんだよ」と言って、我が事のように誇らしげに話してみせた。
    「ねえ、ここにいるのはみんなお友だち同士なの?」
     辺りをきょろきょろと見渡しながら、シュクユウが尋ねる。全員がそういうわけではないのですが、と語り出したカトブレパスの声音は、しずかに熱を帯びていく。
    「こういった街中のコスイベは交流がメインですから、スタジオやロケ撮よりも人と話しやすいですね。絵になる写真を撮る、つまりコスプレでの作品づくりをするよりも、SNSの知り合いを探したり、新しく友達を見つけたりっていうことの方が多いかもしれません。初対面の相手でも同じ作品が好きだって分かれば自然と笑顔になっちゃいます」
     なるほどと相槌を打ちながら、神宿から来た二人は辺りを見渡す。人混みの中に知り合いを見つけ、歓声を上げながら駆け寄る人々。互いに丁寧な言葉で会話を交わしながらも、嬉しそうに表情を弾ませている人々。それぞれの交流の仕方、楽しみ方がそこにはあった。
    「この前の夏にあなたとコスROMを作った時は、撮影がメインでしたし、他のグループの方とはあんまりお喋りできませんでしたけど。むしろこういう場ではいろんな方と話してみたいなって思ったり……」
     不意にカトブレパスは、はっとしたように口をつぐんだ。
    「すみません! 僕、喋りすぎてしまって……」
     慌てたように謝るなり、うつむいてしまう。しおれたカトブレパスを前に、サモナーは大きく首を振った。
    「そんなことないって! むしろカトブレパスといっぱいお喋りできて楽しいよ。色々教えてもらえるのも嬉しいし」
     そうだよね、シュクユウ、と言って隣を確かめる。長身のカトブレパスを見上げるシュクユウは、その丸い瞳をさらに見開き、いっぱいに輝かせていた。
    「すごいや! にーちゃん、詳しいんだね!」
    「いえ、すごいだなんて……。僕……ただ、コスプレが趣味なだけなので……」
    「趣味ならすごくないの?」
    「えっと……」
     そんなことないよね、と答えを先回りして、シュクユウはにかっと笑う。
    「ね、もっと向こうまで見に行こうよ! いろんな人がいるんでしょ?」
     もっと見てみたいや、と言うやいなや、シュクユウはカトブレパスの手をぎゅっと握った。握られた本人は、一瞬びっくりしたような表情を浮かべる。サモナーと目を合わせて、表情をほろっとほどくように笑った。
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