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    fgo_sawara

    @fgo_sawara
    小説あげるマン

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    ケイぐだちゃんワンドロお題「お姫様抱っこ」

    愛し子「ケホッ、けほ……」
     喉が痒いと咳をする。するとカッと熱をもって、じくじくと痛み始めた。
    「うぅ、いたいよぉ……」
    「風邪ですね……生姜湯を持ってきます。今日は安静にしているように」
    「はーい」
     風邪をひくなんて何年振りか。日頃の疲れが溜まっていたのだろうとケイローンは話す。
     生姜湯を片手にキッチンから戻ってきた姿を見ただけで、こうも安心してしまうのは弱っている証拠だろう。人肌のそれを受け取り、痛む喉の奥へ流し込んだ。
     再び潜り込んだ布団の中から手を出せば、何も言わずともキュッと握ってくれた。
    「ここにいてくれるの?」
    「ええ、心細いでしょう?」
    「退屈でしょ? 遊びに行ってもいいんだよ?」
    「妻が寝込んでいるのにですか?」
     苦笑いする彼を見て、うじうじするのも申し訳なくなる。指先同士を擦り寄せ、しばし無言の時間が流れた。
    「立香、テレビ見たいな」
    「リビングへ行きますか?」
    「ん」
     頷いた夫は、私を毛布で二重にも三重にも巻く。見事な巻き寿司状態にして、お姫様のように抱き上げた。暖かくて心地がいいと喜べば、萌葱色は柔らかく細められる。
    「今日ずっと一緒?」
    「ご所望でしたら、いつまでも」
     首筋、耳の裏へと落とされる口付けがくすぐったくて身じろぎした。落下することはないと信じているから、力を抜いて体を預けられる。
     ソファに腰掛けた彼は、そのまま赤ん坊にするように私を揺らしていた。
     つけてくれたテレビを見る気はあまりない。それよりもこの時間が長く続けばいいと願いながら、意識を手放すことにした。
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