二人、初め「あけましておめでとうございます!」
「今年もよろしくお願いします」
大晦日、暖かい炬燵の中。
互いの手をギュッと握って、見つめ合いながら年を越した。
最高に幸せな心地のまま、気づいたら零時は過ぎている。
「もうお正月かぁ……あれ、今日見る夢が初夢?」
「いえ、元日からその翌日にかけての睡眠で見る夢が初夢です」
「そっかぁ」
未だ握ったままの手を擦り合わせ、セーター越しの厚い胸板にこてんとおでこを乗せた。
自然と互いの身体に腕を回し、テーブルの上で乾いているおつまみのことを忘れて身を寄せた。
そっと顔を上げ、萌葱色の瞳に映り込む。
「じゃあ、今からぐっすり寝て、二日に目が覚めたらその時に見たのは初夢?」
「それは……どうなのでしょう」
長い髪を緩く束ねた青年は、柔らかく目を細めた。
その視線を向けられるのが好きだから、ついついこうしてくだらない質問をしてしまうのに。
「そんなに長く貴女が目覚めてくれないのなら、寂しくて気がおかしくなってしまいます」
「ふふっ、たった一日で?」
「ええ、たった一日で」
クスクスと笑みを交わしながら、しばし抱き合った。
今年初めての抱擁だな、などと考えている。
「ん、ぁ」
すいと顎を掬われ、綺麗な瞳を見つめた。
あまりに近い距離に唇が震える。
「……キス初め?」
「はは、そうです」
「ん……」
ぴとりと唇が重なった。
心地よさに蕩けて、うっとりと目を細める。
唇を離せば、はぁっ、と湿った吐息が漏れた。
そんなに長い口付けでもなかったのに、心臓が少しだけうるさい。
「あ、わっ!」
気づけば、床に横たわっていた。
お酒の飲みすぎだろうか。起こしてもらおうと伸ばした腕を絡め取られ、身動きが取れなくなる。
「姫初め、ということで」
「ということでって……あっ」
白いセーターの中に、するりと無骨な手が滑り込む。
ぴくりと身体が跳ねたけれど、抵抗などする気はなかった。
「もう……」
甘えるような仕草に心が溶ける。
腰が砕ける心地。陶酔していく。
自らタイツを脱ぎ落とせば、萌葱色は嬉しそうに弧を描いた。