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    fgo_sawara

    @fgo_sawara
    小説あげるマン

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    次こんな感じの本出したいと思ってる

    #ケイぐだ♀

    君は天使。「えっと……ここだ!」
     周囲の街並みよりも一段と高いマンション。
     その最上階に、目的の人物は住んでいるという。
     白くてふわふわした羽をばさりと羽ばたかせ、風に乗って急上昇した。
     目当ての部屋のバルコニーへと降り立ち、窓に手をかけた。
     すると自然に鍵が開く。
    「天使に鍵など通じないのです」
     先輩天使の口癖を真似しながら、悠々と室内に侵入する。
     広いリビングでコーヒーを飲んでいた住人は、何故だかぽかんと口を開けていた。
     突然、窓が空いたからびっくりしたのだろう。天使である私の姿は見えないのだから。
    「私が幸せにしてあげる人間はこの方ですね、今日からお世話に……いえ、お世話してあげます!」
     
     *******
     
     今日の運勢では、射手座が一位に輝いた。
     なんでも、思わぬ出会いが幸運を呼ぶらしい。占いなどさほど信じてはいなかったが、今回ばかりは価値観が変わりそうだ。
    「早速中を見て回りましょう! 人となりを知ることが基本だと、天使全書に書いてあります……って先輩が言ってました!」
     ニュース番組のゲストの芸人が「なんやこいつ!」と叫ぶ。図らずも、今の私の心境を代弁していた。
    「うわーおっきい窓! ふむふむ、開放感を求めるタイプっと」
     夕焼け色の髪、次のような色合いの瞳、童顔気味な面持ちに……大きな白い翼、頭上で煌めく輪っか。絵に描いたような天使が、自宅を彷徨いている。
     隅々まで見て周り、何やらメモを取るなど忙しそうだ。
    「片付けが得意なんですね、全然散らかっていません……朝ごはんはコーヒーだけですか? ふむふむ、不摂生っと」
     天使が私生活にズカズカと踏み込んでくる。
     咄嗟に見えないフリをしてしまったけれど、そろそろ怒るべきなのだろうか。
     ……人ならざる者が視えてしまうことは、これが初めてではない。目を合わせたら憑いてきてしまうと、その存在を知らなかったことにするのが常だ。
    「お休みの日なのに、ちょっと寝不足気味ですね。痩せ過ぎなわけではありませんが……自己管理はしつつも、自分へのご褒美を疎かにするタイプと見ました!」
     しかしこれは何だ? まるで健康診断だ。
     天使に健康診断をされるとは、稀有な体験ではあるけれど。
    「ふふふ、幸福にし甲斐がありそうです! 貴方を幸せにできたら、私も晴れて一人前の天使ですね」
     彼女の事情が垣間見えた気がする。
     あぁ、いや。分析をしている場合ではない。考えるべきは、どうやってお帰り頂くかだ。
    「やや! アイランドキッチンとは……あっ、これは声に反応して家電を動かすとか言う、あの……って、お掃除ロボットまで! ふむふむ、新し物好きっと」
     やや雑な調査は続く。コーヒーを啜りながら、視線の端の彼女を気にしていた。
     この部屋に入ることができる時点で、悪霊の類いでないことは確定している。本物の天使なのだろう。
     見えてますよと声をかけるべきか。好き勝手言われながら暮らすのは、なかなかにキツいものがありそうだが……。
    (あまり深入りするのも、厄介か)
     会話をすれば、嫌でも踏み込むことになる。
     人の理の外にいる者と、あまり仲良くも悪くもなるべきではない。脳内会議の結果、見て見ぬフリを継続することにした。
    「……」
     テレビを見ているとやって来て、ちょこんと隣に腰掛ける。
     害意はなさそうだ。幸せだの何だのと言っていたし。
     不摂生と言われたので、キッチンからシリアルを取ってきて皿にざらざらと盛り付けた。牛乳を注げば、天使は顔を近づけて興味深そうに匂いを嗅いでいた。
    (食べづらい……)
     食べたいなぁとでも言わんばかりに、ちろりと舌を出している。無意識なのだろうが、そんな少女を無視して食べ進めるのは気分がいいものではなかった。
     さっさと食べ終え、食器をシンクに置いた。
     このままでは何もできそうにない。穏便にお引き取りを願う方法を、早急に編み出さなくては。
    「うーん、顔色が悪いような……」
     こちらの顔を覗き込んで、心配そうに眉根を寄せる少女。この子の存在を無視し続けるのは、特に骨が折れそうだ。
     予定より少し早いが、買い物に出かけよう。少し一人で考えたい。
     そうして、天使から逃げるように家を出た。
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