5時間目・英語 昼休みの後の英語ほど、七ツ森の嫌いな時間はない。だからというわけでもないけれど、七ツ森は窓際の席で校庭を眺めることにしている。なぜなら、風真のクラスが体育の授業だからだ。サッカーの試合をしている玲太は、青いビブスを着てグラウンドを走っていた。風で玲太の額が露わになると、七ツ森は玲太の眉と目元がよく見えるのがたまらなく好きだと思った。
双方のチームにサッカー部員がいたせいか、試合は体育の授業にしては白熱していた。ボールに向かって、玲太と数人のクラスメイトが交錯する。
「あっ……!風真、あぶな……!」
背後で自分の名前を呼ぶ声に驚いて玲太が振り返った瞬間、クラスメイトが強く蹴ったボールが玲太の顔に直撃する。押さえた両手の指の間から生暖かな血がぼたぼたと垂れ、クラスメイト達が試合を中断して玲太の周りに集まる。きっと保健室へ行くのだろう。彼は付き添おうとするクラスメイトを制してひとり、グラウンドを離れて校舎へ向かってゆっくりと歩いていく。七ツ森はその、玲太の顔を汚す赤い血をもっとよく見たいと思った。
1938