初恋の途中 バレンタインを終えたばかりの冬のある日。冬の冷たい澄んだ空気と、まだ幾許か残る午後のやわらかな日差しの中、俺とロイエンタールは校門までの石畳の並木道を二人で歩いていた。
四限目の授業が終わり、バイトに向かう生徒やサークル活動に勤しむ生徒が行き交う道は俄に活気づき、見知った顔にも幾度となくすれ違う。
そんな慌ただしい喧騒の中、俺が声を掛けられないのは隣にいる男のせいだろう。
オスカー・フォン・ロイエンタール。成績優秀、眉目秀麗で名を馳せ、大学のミスターコンテストでも毎年優勝している美丈夫だ。加えて運動神経もよく、読んで字の通り貴族様でもある。
本人は名ばかりの下級貴族だというものの、父親はこの国でもそこそこ名の知れた有名投資家で、その財産と言えばかなりのものだ。
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