Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

    文章や絵を投げます

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💕 🍇 🐥 🍣
    POIPOI 472

    流菜🍇🐥

    ☆quiet follow

    いけないことをするTF主ルチの話、第2弾です。今回は夜のお散歩です。

    ##TF主ルチ

    いけないこと その2 夜中に目が覚めた時に、隣の様子を窺うことが癖になってしまった。ルチアーノが涙を流していないか、心配になってしまうのだ。
     隣からは、ごそごそと衣擦れの音が聞こえる。寝返りを打ったのか、ベッドが揺れてスプリングが軋んだ。物音は響いているが、鼻を鳴らすような音は聞こえてこない。後ろに視線を向けると、驚かせないように声をかけた。
    「眠れないの?」
     布団の奥で、僅かに身じろぎをする気配がした。背後に眠る少年は、目元だけを覗かせると、湿った声で答える。
    「別に」
     素っ気ない返事だが、そこに込められた感情は読み取れた。彼は、眠れなくて困っているのだ。涙を流さなくなったからと言って、安眠できるようになったわけではないのだろう。
     僕は、ゆっくりと寝返りを打った。ルチアーノにぶつかりそうになりながらも、なんとか向こう側を向く。ルチアーノは、僕の方に身体を向けていた。布団の中に潜ったまま、胸に頭を押し付けてくる。
    「ねぇ、ルチアーノ」
     声をかけると、彼はゆっくり顔を上げた。布団の中から、赤い髪と緑の瞳が覗いている。両の瞳は、ほんのりと濡れていた。
    「なんだよ」
     湿った声でルチアーノが答える。弱さを隠そうともしない、無防備な声だった。そんな場合じゃないのに、信頼してもらえたことに嬉しさを感じてしまう。
    「眠れないなら、いけないことをしようか」
     そう言うと、彼は呆れたように息を付いた。僕を見上げると、からかうような声を出す。
    「また、アイスを食べるとかなんだろ。もう騙されないぞ」
     あの日のことは、彼には騙されたという認識になっているらしい。そもそもが勘違いだし、別に騙したつもりは無いのだけど、指摘したら怒られるから黙っておく。
    「今日は、もっといけないことをしようよ。準備するから待ってて」
     そう言うと、僕はベッドから降りた。洋服タンスを開くと、中から着替えを取り出す。ルチアーノの分を取り出すと、ベッドの上に置いた。
     ルチアーノは布団から身体を出した。ごそごそと布団を捲り上げると、上半身を起こす。着替えを並べる僕を見ると、怪訝そうな顔をした。
    「何してるんだよ。着替えなんか出して」
    「夜の散歩に行くんだよ。ほら、着替えて」
     着替えを押し付けると、彼は嫌そうな顔をした。眉を潜めると、呆れたように僕を見る。
    「今から出かけるのかよ。こんな時間に?」
    「こんな時間だからだよ」
     そう言うと、僕は服を着替え始めた。逃れられないことを悟ったのか、ルチアーノも着替え始める。鞄を手にすると、僕はルチアーノの手を取った。
    「じゃあ、行こうか」
     夜の町は、昼よりも静かだった。住宅が立ち並ぶ通りには、人の気配は少しもない。夜中の二時なのだ。大抵の住民は眠っているのだろう。
     静寂に満ちた町の中を、ルチアーノと二人で歩いていく。僕が手を引くと、彼は黙ってついてきてくれた。薄暗い夜の住宅街は、少しだけ不気味だ。街頭の灯りだけを頼りに歩いていると、異世界に紛れ込んでしまいそうな気分になる。
     僕が向かった先は、住宅街の中にあるコンビニだった。マンションとマンションの間に、こじんまりと建っている、周辺住人御用達の店舗だった。僕も、急用がある時にお世話になっている。
    「着いたよ」
     声をかけると、ルチアーノは目の前の建物を見上げた。それがコンビニであることを認識して、怪訝そうな顔をする。
    「コンビニ? ここに、何の用があるんだよ」
    「用事はないよ。ただの散歩だから」
     答えると、僕は自動ドアを通った。店内を歩いて、目ぼしいものがないかを探していく。僕は未成年だ。こんな時間に出歩いていい歳ではない。正義感の強い大人に見つかったら補導されてしまいそうだが、レジの若者は僕をちらりと見ただけで視線を外した。
     僕は、菓子パンとお菓子を手に取った。ルチアーノに渡そうと思って、ぶどう味のジュースもカゴに入れる。最後に、ホットスナックのケースを眺めた。夜に食べるジャンクフードは格別だ。レジに向かうと、唐揚げを注文した。
     会計を済ませると、イートインコーナーへと移動する。ルチアーノにジュースを渡すと、レジ袋の奥に手を伸ばした。唐揚げの容器を開ける僕を見て、彼は呆れたような声で言った。
    「ここまで来てジャンクフードかよ。君は本当に食べることが好きだな」
    「食事は、生命の源だからね」
     答えながら、僕は唐揚げを頬張った。もぐもぐと咀嚼すると、次の唐揚げに手を伸ばす。
    「で、これが『いけないこと』なのかよ。コンビニでジャンクフードを食べることが?」
     僕の様子を眺めながら、ルチアーノは言う。彼は、人間の法など知らないのだ。
    「僕は未成年なんだよ。ルチアーノも、見た目は未成年だよね。未成年は、夜中に出歩いちゃいけないんだ。大人に見つかったら、補導されちゃうかもしれないんだよ」
    「つまり、僕たちは法を破ってるってことか? ふーん」
     ルチアーノは面白そうに笑った。にやにやと笑いながら、ジュースを口に含んだ。
    「そうだよ。僕たちは悪い子なんだ」
     雑談を続けながら、僕たちは食べ物を口に運ぶ。窓の外には、夜の町が広がっている。建物の外と中は、まるで別世界だ。
    「君って、変なやつだよな。こんなことが楽しいなんて」
     そう言いながらも、ルチアーノも少しだけ楽しそうにしていた。悪いことをしていると知って、嬉しくなっているのだろう。意外と単純なところがあるのだ。
    「悪いことをするのは、ちょっとドキドキするでしょ。僕だって、こういうことをするんだよ」
     食べ終わると、僕たちは再び外へ出た。夜の闇を歩いて、家へと帰る。少しの間だったが、人に見つからないかとひやひやした。
     部屋に入ると、歯磨きもせずに布団の中へと潜り込む。ルチアーノを呼び寄せると、隣に寝るように促す。もぞもぞと音を立てながら、ルチアーノが入ってきた。
    「なんだよ。まだ眠くないぜ」
    「寝転がってるうちに眠くなるよ。食べた後は、眠くなるものなんだから」
     そう言うと、僕はルチアーノを抱き締めた。何となく、人肌が恋しかったのだ。抱き枕にするように、小さな身体に両腕を回した。
    「なんだよ。君だって眠れないんじゃないか」
     腕の中でルチアーノが言う。呆れたような声だったが、嫌がっている様子はなかった。
     しばらくそうしていると、ゆっくりと眠気が訪れてくれた。腕の中の温もりを感じながら、うとうとと微睡む。ルチアーノも眠たくなってきたのか、すうすうと呼吸をしていた。
     ルチアーノは、夜というものが嫌いらしい。一緒に夜を過ごすことで、少しでも苦手意識が無くなってくれたらと、僕は思うのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💞💞🌃🙏🙏💞
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works