運命の赤い糸②【藤堂 ーPurpleー】
家を出てから2時間後。
俺は自分の指に結ばれた糸の先を追ったが、未だに糸の先にたどり着くことが出来ずにいた。
一度休もうと道の途中にあったベンチに座って体を休めていると、持ってきた携帯電話が鳴り出す。
液晶画面に表示されている発信元を確認すると、そこには藤堂という文字が出ていた。
すぐに通話ボタンを押したが、一方的な会話は相変わらず。俺が今どこにいるかだけを聞かれ、素直に答えればそこで待ってろとだけ言って切られてしまう。
「赤井」
その数分後、約束通り藤堂の車が目の前に来た時に気づいてしまった。先程から探していた、俺の指からどこかに繋がる糸が、この車の運転席にあることに。
「で、あんなところで何してたんだ」
右側の助手席に座ると、再び車が走り出す。藤堂に質問をされながらも、ちらっと藤堂の小指と自分の小指に赤井意図が繋がっていることを確かめる。藤堂の様子からすると、どうやら藤堂にはこの赤い糸は見えていないようだった。
「…ちょっとな。それより要件くらい教えてくれてもいいだろ」
「行けば分かる」
ぶっきらぼうな言い方に、つい反論する。こうやって車に乗ってしまう自分も悪いが、少なくとも要件を聞くくらいは良いはずだ。
「藤堂…」
睨みつけるようにジッと藤堂の顔を見つめていたが、俺からの視線が気になるのか赤い糸が垂れている方の手が車内の収納扉を指を差した。
「……そこのグローブボックス、開けてみろ」
言われた通りの場所を開ければ、中には紙が二枚入っている。手に取って記載されている内容を見れば、それは先日応募をして、外れてしまった映画の試写会チケットだった。
「なんでこれ…」
「俺も応募してたからな」
応募していたことや外れてしまったことは話をしていたが、まさか藤堂も抽選しているとは思わなかった。もちろん藤堂自身はこの映画に全く興味などないのはずなのに、こうして手伝ってくれていたことがなにより嬉しい。
「ありがとう」
嬉しさのあまりシフトレバーにかけていた藤堂の手を掴んだ瞬間、驚いた声を上げた。
「これは…」
自分の小指から俺の指へと視線を移し、触れたことで藤堂にもこの糸が見えるようになったことが分かる。
「俺も分からないんだ。でも、このままだと外に出られないよな」
今は車の中だから良いものの、映画館に入ればもしかしたら他の人に見えてしまうかもしれない。
「なら、見せつけてやればいい」
「本気か?」
「当たり前だろう。それにこれなら赤井が、先約済みってことが一目で分かる」
得意げな顔で答えるのを見て、この赤い糸の意味に気づいているのかもしれない。何か知っているなら教えて欲しいと問いかけたが、藤堂は俺は何も知らないとだけ答えられてしまう。
自分だけ知らないままなのが納得いかずに不貞腐れていると、赤信号になったのか車が少しだけ揺れて一時的に止まった。
「――赤井」
そして、強引に俺の右手を掴むと嬉しそうに赤い糸が結ばれた指へキスをした。