やらかしたなぁって思ってたら萩原さんが優しくしてくれた話研二と同棲を始めて少し経った頃、腹痛で目を覚ませば下腹部に感じる違和感に嫌な予感を感じつつ、隣で眠る彼を起こさないようにそっとベッドを抜け出した。お手洗いで下着を見ると嫌な予感は的中。べっとりと広がった赤いシミにため息が出る。もうすぐだとは思っていたが油断していた。幸いシミは下着だけで収まっていて、ベッドにまでは至っていないだろう。
とりあえず着替えて、汚れた下着を洗わねばと洗面所で水を流す。朝早く汚れた下着を洗うというのは心が不安定になる時期でもあるせいかなんともいえない悲しみを感じる。しかも、今は一人暮らしではなく家には彼もいる。
「おはよ」
「ひっ、あ、お、おはよう」
早く片付けてしまおうと思った矢先、彼の声にびくりと肩が跳ねた。咄嗟に振り返り、後ろ手に下着を隠すと彼はどうした?と不思議そうに首を傾げる。なんでもないと答えれば彼の視線は私よりも後ろへと向いた。そう、洗面所には鏡があることを失念していた。見られたと思うとどうしたらいいのか分からなくて、じわりと瞳が濡れる。すると彼は優しく笑ってそっと私の頭を撫でた。
「寒くない?温かいお茶淹れてくるから、俺に出来る事があったら教えて」
お姉さんがいる彼はおそらく察したのだろう。それでいて、自分から踏み込むのではなく私がしてほしい事だけを手伝おうと待っていてくれる。そんな優しさが嬉しくてリビングへ向かおうとする彼の服を咄嗟に掴んだ。
「…研二、ありがとう。そういうとこ好き」
一瞬驚いた様な表情をしたと思うと、すぐに愛しさのこもったいつもより柔らかいものに変わる。
「大した事してねぇけど、俺もお前のこと大好きだぜ」
部屋温めてくるわと出ていく彼の背を見送る頃には悲しさも消え、少し心が温かくなったような気がした。