「私、ふるやさんのことが好きなの……」
上気した頬に、潤んだ瞳。降谷の隣に立つ女性・宮野志保は、恋する乙女の顔をしていると言って差し支えないだろう。酔っ払ってへべれけになっていることを除いても。
動揺で彼女を支えていた腕の力が弱まり、かくんと膝を折らせてしまう。転ぶ前にもう一度腰を抱きよせ、正面に立たせる。
残暑が過ぎ、秋が始まろうとする夜。仕事の飲み会で酔い潰れた彼女を家まで送っている最中の出来事だった。
「……本当に?」
「ええ。大好き」
降谷の胸が歓喜で踊った。この記念すべき日を祝福し、彼女の額に思わずキスを贈る。ふふふと笑った彼女が可愛くて鼻に愛玩のキス。ついでに頬にもキス。
最後は……迷って、唇に……
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