さなぎのつづき1鮮やかに生まれ変わった男が、街中で派手に暴れている姿を横目で見る。嶋野組若頭真島組組長、真島吾朗。巷では、嶋野の狂犬と呼ばれ、この神室町をそのサイケデリックな姿で好きなように騒がしていた。今日もどこかへカチこみでもかけにいったのか、凹んだ金属バットを片手に、子分を連れて、ネオン光る大通りを闊歩していた。一般人も、その異様な雰囲気に、思わず端に身をよせる。極道らしき者も、苦虫を噛んだ顔でその一団を見ていた。
真島は他の組の持ち分だけでなく、嶋野組のなかでまで引っ掻き回しているらしく、困ったやつだ、気がおかしいのじゃないのか、どうして親父もだまっているんだ、と同じ組の者たちからも、怨嗟の声が聞かれた。同門の米櫃に手をつっこんで、取り分をもらおうとするのは、極道界のタブーである。たとえそれが、自分より格下の組のシノギであっても、同じ組内であれば、手順を踏まずに横取りすることは、上からも下からも嫌われる行為であった。
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