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    ピクシブにUPしてあるChrysalis(さなぎ)の続き。柏ゴロ(柏真)。極のどこマジシステムのメタな部分を頑張ってシナリオに落とし込もうとした話。導入部分。

    #柏真
    kashiwajin

    さなぎのつづき1鮮やかに生まれ変わった男が、街中で派手に暴れている姿を横目で見る。嶋野組若頭真島組組長、真島吾朗。巷では、嶋野の狂犬と呼ばれ、この神室町をそのサイケデリックな姿で好きなように騒がしていた。今日もどこかへカチこみでもかけにいったのか、凹んだ金属バットを片手に、子分を連れて、ネオン光る大通りを闊歩していた。一般人も、その異様な雰囲気に、思わず端に身をよせる。極道らしき者も、苦虫を噛んだ顔でその一団を見ていた。
    真島は他の組の持ち分だけでなく、嶋野組のなかでまで引っ掻き回しているらしく、困ったやつだ、気がおかしいのじゃないのか、どうして親父もだまっているんだ、と同じ組の者たちからも、怨嗟の声が聞かれた。同門の米櫃に手をつっこんで、取り分をもらおうとするのは、極道界のタブーである。たとえそれが、自分より格下の組のシノギであっても、同じ組内であれば、手順を踏まずに横取りすることは、上からも下からも嫌われる行為であった。
    最近はそういった極道社会の政(まつりごと)に嫌気がさして、どこの組にも属さずヤンチャをする、ギャングという手法でグループを作り暴れるやつもでてきている。それでもこの神室町で何かをするとなれば、誰かがケツをもっていて、あのグループは誰々の手下だ、金をもらっているようだ、というような話も聞く。暴対法が施行され、表立って自らの動きがとれなくなった極道が、そいつらを使ってどこかにちょっかいをかけて火種をつくろうと画策する。だが真島は、そんな下手な策略をめぐらすヤクザを嘲笑うように、自ら殴り込みにいくものだから、もはや手のつけようがなかった。

    『極道とは所詮面子と力の張り合い。力で敗れたほうが悪いのだ。』

    極道がよく言う言葉である。真島は実際、この街で誰かが比肩することもできないほど強かった。あいつに目をつけられたら終わり、災害のようなものだ、と諦められていた。
    強い者には信者が集まるように、真島組に入りたいと思う者も数多くいたが、真島自身は、勢力の拡大などは念頭にないらしく、西公園の雑居ビルを一応の事務所とはしているものの、部屋も規模も小さく、金の入りすら不透明で、どうやってシノギをあげているのかすら謎めいた集団になっていた。
    真島に付き従う顔はいつも一定だった。新しい子分もあまりとってはいないようだった。だが、そんな奇妙な集団でも、極道は極道だ。この街で、気に入ったものがあると、真島は動き出す。しかもあれこれ策を弄せず、真向正面で相手事務所を屈服させにいくのだから、その姿は、いっそ潔いとすら思われた。

    とある街金の事務所を真島が襲撃したと知らせがあった。バブルが弾け、不況も長く続くなか、銀行からは貸し付けが受けられずブラックリストにのせられ、消費者ローンに流れ着く者は多かった。あの真島ですら、ついに金貸し業に手をつけはじめたか、と皆ざわついた。神室町の闇金の大部分は旧堂島組系の傘下で、なかでも風間組のシノギの本筋だった。こちらのシノギとかぶることもあったため、警戒を強めた。いつか風間組のシマに入ってきたら、もう一度手合わせすることもあるだろう、と思ってもいた。けれど、やってはいけないこと、の区別は明確にあるようで、真島は一切こちらのシマにははいってこなかった。

    「派手に暴れているようだな。」

    中道通を子分を連れて歩く真島に、そう声をかけたことがある。真島は少し驚いたような目でこちらを見てから、唇をあげて、

    「おかげさんで。」

    と軽く会釈して通り過ぎてしまった。何か言葉を返されることを想像して声をかけたものだから、拍子抜けだった。むしろ、昨今のことで釘をさすつもりだったが、こちらのほうの心に一矢放たれた気分になった。クレバーな態度、やわらかい物腰。そして、その身から放たれるシトラスの甘い香水の香り。

    誰にでも噛みつく狂犬像などというのは、彼のフェイクである。カモフラージュ、といってもいい。

    (すべて計算されつくした姿なのだろう。)

    風間組に手出しをしないから、嶋野が彼を許しているのか、それとも、いつか公然と風間組に喧嘩を売るために、真島を好きにさせているのかは分からない。真島が何かを欲して派手に暴れる、嶋野はそこを火種にしようとしているのかもしれない。だから、真島の動向を注視する、という名目でもって、忙しい日々のなかでも、彼の姿を追っていた。それでもこの十年、言葉を交わしたのは数回と両手の指で数え切れるくらいだった。

    昔から知っているんだ、という誰にも言うことのできない優越感で見るだけになった。
    あの事件を知る者ももうこの街には少なくなった。長い髪をしっぽのようにくくって、今にも泣きだしそうな顔でこの街をさまよっていた青年の姿は、もう誰の記憶にもないだろう。

    昔から知ってるんだ、そのつまらない優越感がなにによるものなのかわからない。
    ただ、真島の纏う香水。その香りが、都度、昔の彼を思い出させた。同じ香水を使い続けているのかわからないが、そのタキシードからは男性にしては甘い香りがしていたな、とその花のような香りを嗅ぐと思い出された。



    十年以上も前。サナギとなった部屋を出た彼は、見事に蝶に変身していた。いつか思いたった時に、こちらにふらりとよってくるかもしれない、とあの窓辺で待っていたが、蝶は自由に羽ばたき、こちらの手の内にかえってくることはなかった。
    雑踏のなか、真島とすれ違う。鼻孔をくすぐる甘い香り。香りはさまざまな思い出を瞬時に脳内に蘇らせる。熱い情事を思い出してしまって赤面した。若い頃の過ち、ではないが、それは、開けてはいけない箱なような気がしたから。それ以来、真島に不用意に近づくのは止めにした。どこを探しても、もう彼はいないのだから。
    いつしか、その心も忘れ去っていた。あの青年はあの日でいなくなったのだと、セピア色の思い出のなかにしまわれていった。



    今宵も、街で真島とすれ違う。同じ香りをまとう男がいるだけだ。狂犬と呼ばれるにしては、柔い表情で会釈し通り過ぎる。こちらも固い表情で頷き通り過ぎる。供回りの部下は言うのだ、トップの組の若頭同士、さすがの真島も弁えていますね、と。そうだな、とおざなりに応えた。

    「…………。」

    蛇皮のジャケット。カオスな街に溶け込むようなその背中を見やる。やはり今日も、その姿からは、どこか、後を引くような甘ったるい香りがした。




         * * *




    いつも変わらぬ風貌の男が、子分に囲まれ、神室町の出入り口、天下一通りの赤い結び目の看板から少し離れたところで、迎えの車に乗るところを見る。風間組若頭、柏木修。以前は、鬼の柏木、通称鬼柏などと呼ばれるほど剛毅な男だったが、いまは年齢を重ね落ち着いた幹部らしい雰囲気になっている。今日もどこか堅気の企業との取引だろうか。スモークガラスが開いた向こうに、ちらりとグレーのスーツの男を見た。お堅そうな形(なり)だ。道行く人もさしてその車に目をむけず、高級な外車は走り去ってゆく。向かうは青山か、はたまた赤坂か。
    神室町に極道として戻ってきてから、この街の勢力図も様変わりした。以前は堂島組一強だったものが、自分が事件を起こしてから斜陽になり、そして、桐生が堂島を殺害してから、風間組が一気に東城会のトップに駆け上がった。
    桐生一馬が殺人の現行犯で逮捕されたという話は、その日のうちに知らされた。風間がついに動きおった、しかもあんなやり方で!と嶋野が事務所で大暴れし、誰彼かまわず当たり散らしていたからである。自分も、はじめは、風間に指令され桐生がやったのだと思っていた。本当に強い者は、ここまでは大丈夫だという加減がわかるものである。桐生は強い。だからこそ、殺意がなければ人を殺しはしないのだと思った。しかし、堂島は現に死んでいて、桐生が容疑者として捕まった。そして、嶋野の言葉である。あの桐生ならば誰かの代理で出頭するということもあるのかな、と思えた。無論、本当に殺害したのかもしれない。育ての親である風間の命令なら必ず従うということも加味して、だ。また、己の認めた男が、親の命令に従って獄中にいったのか、と鼻白んだのを覚えている。
    その日から、風間組はこの神室町で躍進した。今は自分の所属する嶋野組と風間組が街を二分する勢いでシノギを削っていた。風間が擁した世良会長のもと、みかじめの取り立ての方法などについても厳しく制限が設けらえた。簡単に言えば、必ず何かしらの契約書を交わし履行した上で、賃金の支払いという形にもっていけ、というものであった。昔のように、店長いつもうちのもんがお世話になってますな、という声かけだけで堅気から取り立ててはいけない、と。そういう無茶な取り立てがあった場合は、東城会本部に言ってきてほしい、とまで世良はやりだしたものだから、たまらなかった。街でそういったトラブルがあった際、そのケツをもつのは、風間組である。
    風間組は自分のシマからはみかじめを取らない代わりに、店に余力があれば、NPO法人などに寄付という形で金を流してほしい、寄付分は税金の控除が受けられる、その相談にものります等とやりだした。むろんその法人も、二重三重に偽装されたヤクザのフロントである。だが、形式上はクリーンなやり方であった。それを知った際には、手口が鮮やかすぎて唖然としたものである。
    風間組は見事に現代のヤクザの金の稼ぎ方に適応した。桐生が親の堂島を殺害したことで、皮肉にも神室町の治安は良くなったのであった。街では、風間組こそ正義、という風潮であった。
    対して、嶋野組は、元々香具師の集まりである。昔からの縁日屋台とスポーツ・芸能イベント興行がなんとか集金装置になっていたが、芸能界からはクリーンなイメージを、ということで契約を断られることもあり、実質売掛金が落ちていた。嶋野は新しいシノギの方法を考えろと子分に命じたが、こちとら学もなく一晩で思いつくことも限りある。手っ取り早いのは、小さな組が直営でやっている店や事業を奪うことである。大手コンビニチェーンですら、人気の立地はフランチャイズの店を潰して直営店にするというのだから、極道がその方法に躊躇することはなかった。儲かっていそうな店、面白そうな事業をしている企業を片っ端から自分のモノにしていった結果、ついた綽名が、嶋野の狂犬である。誰にでも噛み付きやがって、というが、こちらも誰彼ケンカを売りにいっているわけではない。風間が東城会の若頭であるうちはうかつに動けん、と嶋野はほぞを嚙んでいた。きっと風間組にケンカをうれば、面倒なことになることはわかっていたので、それはやらなかった。

    春の麗らかなある日。泰平通りに面したビルに、目指す組事務所があった。ネットを使ったスポーツのトトカルチョの胴元がここらしいと聞き、面白そうだと思ったので奪いにいった。ウィンドウズ95が発売されてから、にわかにITバブルがおこり、ヤクザもそちらのビジネスに傾注することになった。とみに2000年代に入ってから、携帯電話の発展とともにインターネットが普及し、ヤクザの集金の手口もそれを使ったものが多くなった。そんななかでも、桁数の大きなシノギをしていたのが、その組であった。真っ黒な商売を裏掲示板で堂々でやっている割には、名前も聞いたことのない組だったので、なんのためらいもなくカチこんだが、後で聞けば、どうも二代目になって名前は変わったが、昭和から続く老舗の二次団体で、大元の資金は旧堂島組系の闇金と、なかなか複雑な金の流れを持つ組らしかった。親の嶋野から呼び出され、これは説教くらうかな、と思っていたら、にんまりと笑われ、気ぃつけよ、と言われるだけだった。
    まるで、もっとやれ、と言われているようで、逆に萎えた。嶋野は時々、人をこういった扱い方をする。放任されているように見せかけて、また親の掌で踊っているのかと思ったら、イラつきと虚しさがあふれてくる。あの事件からなにも変わっていないのではないか。狂犬などと言われていても、それは首輪こそしていないだけで、私有地のなかで走りまわっているだけの犬に変わりないのではないか。


    言い知れぬ気持ちを抱えて、街をぶらついていたら、道の対岸からよく知る顔が出てきた。風間組若頭の柏木が、いつも通り眉間に皺を刻んで事務所に戻ろうとするところだった。いつも変わらない姿に、ふっとささくれだった心がゆるむ。

    「派手に暴れているようだな。」

    すれ違いざま、そう声をかけられた。いつも道であっても、そうそう言葉を交わす間柄でもない。投げかけられた視線の鋭さに驚いたが、咄嗟になんと答えていいかわからず、

    「おかげさんで。」

    と微笑んでしまった。笑顔は駆け引きに使える、と教えられた昔の癖がでてしまった。柏木は何もいわなかった。一瞬足を止めたが、歩き出す。すれ違う。タバコの香りがする。


    この匂いを知っているな、と思う。世間では、風間組の若頭はいるかいないか分からないような男だと言われている。昔は強かった、という人もいる。実質の組を仕切っている、やり手だというひともいる。穏健派だという人もいれば、優柔不断だという人もいる。機械的な中間管理職だという人もいる。だが、それはすべて彼の一面しか見ていないのだと思う。

    (自分が知る鬼柏は、とびきり熱くて優しい人だった。)

    情の塊のような人だった。見ず知らずの人間に、ぽんと金を貸してくれて、そしてボロボロだったこちらを気にかけてくれた人。どん底のあの日を越せたのは、あの人のおかげである。


    誰も知らないあの人を知っているんだ、という誰にも言うことのできない優越感で見るだけになった。
    事件はもう二十年近く前の話で、人々の記憶からも風化していっている。毎日いろいろなことが起こる街だから。あの人と自分の会話の記憶も、そこで交わされた、一夜の話だ。

    誰も知らないあの人を知っているんだ、という優越感は一体だれに対しての感情なのかはわからない。
    ただ、すれ違うたびに、煙草の香りと整髪料の香りがして安心する自分がいた。いつしか髪を下すようになってしまって、男性化粧品特有の香りはなくなってしまったけれど、やはり、同じ煙草の匂いがする。ヤニと男の匂い。



    十年以上も前。朝日にまぎれて部屋を出て行った彼は、そのまま帰ってくることはなかった。街を歩く自分を捕まえにもこなかった。覚えていないことはない、とは思うのだ。けれども、それは柏木のなかでは汚点となっているだろう。きっと一夜の間違い、と封じられた記憶なのだ。
    それでも、街中ですれ違うと、その煙草の香りと整髪剤の匂いが香るたびに、嬉しく思う自分がいた。その入り混じった匂いは、柏木の匂いだと脳内に刻みついているらしい。どこかでそれらしき香りを嗅いでも思い出すのだ。自分があの人の慈悲をもらった夜。その時にも、同じ煙草の匂いがしていた。ずっと、同じものを吸っているのだと思うと、ある種のノスタルジックすら感じる。あの日に吸っていたものと、今でも変わらないのだな、本当に律儀な人だなと。
    真面目な人だからこそ、離れなければ、と思った。自分が戯れにちょっかいだしていい相手ではないと思った。手を出せば、冗談では済ませられなくなるとわかっていたから。あの一夜のことは、いつしか美しい思い出として胸裏に再生されるだけになっていた。


    今宵も街で柏木とばったりと出会う。四方2・300メートルもない区画のなかで、同じ仕事をしている。顔をあわせないようにしても、どうしても時間帯などでバッティングしてしまう。

    「…………。」

    すれ違う。こちらを見ても、なにも言わない。その瞳に目配せしてみても、寡黙な目礼がかえってくるだけだ。それでもいい、と思う。今更、あの日のことを蒸し返して、どうこうしようという気もないのだから。ただ、この神室町にあって、今もあの人が普通に極道として生活していることに、ふと安堵している自分がいる。何かの事件に巻き込まれて獄に捕らわれることもなければ、ヘマをして街を去ることもない。あの人は、いつもこの街のどこかにいる。それが、縁となっている。望んでもそうそう蜘蛛の糸はおりてはこないけれど、今でも、その細い白糸がこの身体のどこかに、ささやかに繋がっている気がする。それだけで、この狂いそうな孤独感が少し和らぐのであった。






    つづく
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    MOURNING京にきてからの鴨五。五視点。維!のド核心のネタバレ有(むしろその話)なのでご注意ください。
    十夜孟冬、市場に殻付きの銀杏の実が売り出される頃。開け放した障子戸から、念仏の声が聞こえる。京の各寺院では、この時期に、十夜法要が開催される。念仏を十日十日唱える、という法要だ。実際には十日も唱えていないのかもしれないが、寺院が多いこの界隈は、この寺が唱え終わるとこの寺、というように、ひっきりなしに様々な音律の念仏が聞こえる。この時期は、お十夜、と京洛では呼ばれていた。

    今日はまだ少し日中は暖かく、褞袍を羽織らなくても、袷(あわせ)の着物一枚だけで心地よい。縁側に紙を敷き、そのうえで銀杏の殻を割る。木槌を使って、一つ一つ殻に割れ目を入れるのだ。面倒だが、これをしないと火鉢の上で爆発する。銀杏の白い殻を持ち、コンと木槌を落として割っていく。コン、ぱり、コン、ぱり、という小気味よい音と、遠くから聞こえてくる念仏の声。穏やかな午後だ。一週間前に、あの凄惨な事件があったことなど、嘘のように。胸に芽生えた苛立ちに、木槌を落とす手元が狂った。コンッ、と高い音がしたと思ったら、指から外れた硬い殻が濡れ縁を転がっていく。
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