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    sueki11_pxv

    @sueki11_pxv

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    MOURNING京にきてからの鴨五。五視点。維!のド核心のネタバレ有(むしろその話)なのでご注意ください。
    十夜孟冬、市場に殻付きの銀杏の実が売り出される頃。開け放した障子戸から、念仏の声が聞こえる。京の各寺院では、この時期に、十夜法要が開催される。念仏を十日十日唱える、という法要だ。実際には十日も唱えていないのかもしれないが、寺院が多いこの界隈は、この寺が唱え終わるとこの寺、というように、ひっきりなしに様々な音律の念仏が聞こえる。この時期は、お十夜、と京洛では呼ばれていた。

    今日はまだ少し日中は暖かく、褞袍を羽織らなくても、袷(あわせ)の着物一枚だけで心地よい。縁側に紙を敷き、そのうえで銀杏の殻を割る。木槌を使って、一つ一つ殻に割れ目を入れるのだ。面倒だが、これをしないと火鉢の上で爆発する。銀杏の白い殻を持ち、コンと木槌を落として割っていく。コン、ぱり、コン、ぱり、という小気味よい音と、遠くから聞こえてくる念仏の声。穏やかな午後だ。一週間前に、あの凄惨な事件があったことなど、嘘のように。胸に芽生えた苛立ちに、木槌を落とす手元が狂った。コンッ、と高い音がしたと思ったら、指から外れた硬い殻が濡れ縁を転がっていく。
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    MAIKING5のつづき。同じ章(同じ事件の日)ですが、前回の更新で入りきらなかったところです。柏木、真島の視点で続きます。
    さなぎのつづき5.5西公園が燃えて、花屋と連絡がつかなくなった。緊急車両のサイレンが落ち着いたと見た頃、様子を見に、事務所を出た。

    (これは、本降りかな…。)

    宵の口にぽつぽつときていた雨脚が強くなっている、傘をさし西公園へむかう。

    西公園の中には、久しぶりに入る。この周辺は嶋野組の取り分のシマも多いため、極力近づかないようにしていた。真島組の事務所があるのも、このあたりであった。相変わらず、日本のものとも思えぬ悪臭が鼻をついた。それに混じり、プラスチックの燃えた化学薬品のような臭いがした。ブルーシートで作られた家も、損傷が見えた。だいぶと酷くやられたようだ。ここいらにいるのは、ただのホームレスではない。元極道や犯罪者、戸籍を持たぬものなど、あの神室町にすら居場所がない人間がここにはいる。普通の極道すら近づかない、といわれているが、地下のシステム含め、ここは日侠連のシマであった。ここに逃げて来る人間をスカウトし、世良はヒットマンに仕立てていた。下手をうち、殺されても誰も文句の言われない人間を見つけるには、うってつけの穴場だった。
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    MAIKINGさなぎの続き。時系列は極。ソシャゲのシナリオネタも入っています。柏木視点、真島視点と続きます。
    さなぎのつづき22005年12月4日。東城会三代目であった世良が何者かに狙撃され殺害された。その葬儀の翌日、前夜に出所してきたという桐生を街で探したが、見つからなかった。桐生は風間が狙撃されたその場にいた。自分か駆け付けた時にはもうその姿はなかったが、シンジ曰く、風間が呼んだらしかった。相変わらず自分が知らないところで風間は動いているな、と苦虫を噛んだが、親の思考が読めないのは別に今に限ったことではない。とかく桐生と連絡をとることが先だと、シンジに聞くと、昔からの桐生たちのたまり場であったセレナというバーが連絡拠点になっているという。そちらに電話をかけたが、あいにく不通だった。社外秘ならぬ、組外秘のことだが、桐生には、風間の容態は伝えた方がいい気がした。きっと心配しているだろう。風間は搬送先で一度意識は回復したものの、手術の影響からか再び眠りについた。心臓付近を撃ち抜かれ、予断は許さない。だが、とにもかくにも一命はとりとめたことを教えてやらねばならない。会場では、桐生が風間を襲撃したという噂がまことしやかに流れていた。
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