シーツで挟んだキャベツのサンドイッチ(しきなな/ノベコン中退避)ゆさゆさ、ゆさゆさ。
「四季さん起きてください。」
朝8時。今日は孤児院でピクニックにいく約束だ。七瀬が訪れた時は既に子どもたちが起きており、朝食の用意をしていた。しかし四季の姿は無く、聞けば声をかけたけど起きなかったそうだ。
部屋に入った七瀬はベッドの上に丸まった四季を見て、まずは風邪を引いてないか確認する。熱も無ければ辛そうな様子も無い。机にはピクニック用の籠やいくつかの麦わら帽子、しおりとともにペンが散らかっており、深夜まで準備してたから眠いんだとわかった。
「四季さん、もうみんなご飯を作り始めてますよ。」
「んん……。」
うめきながら身動ぐ四季を見て、七瀬も流石にダメだなと思った。
「七瀬さん、四季先生はどう?」
小さい子がこちらを覗いてくる。普段は四季の部屋に入らないよう言い付けられているため、ドアの前に何人か集まっていた。
「四季先生、ピクニックが楽しみで寝れなかったみたいです。」
子どもたちはきょとんとしたり笑ったり、様々な反応をした。七瀬も合わせていたずらっ子のように笑う。
「だからここでピクニックしませんか?」
陽が高くなり、眩しく感じた四季はシーツに潜り込む。
(……陽射し?)
寝る時にカーテンは閉めたはずだ。誰かが部屋に来たのだろうか。心なしか周囲も騒がしい気がする。
宇緑孤児院で遭ったような人攫いはもういないはずだ。しかし、忘れられない警戒心に叩き起こされた四季はベッドから跳ねるように降り、カーテンが開いてることを確認した。机を見ると昨日準備したピクニック道具が無くなっており、ペンは綺麗に片付けられていた。そして部屋の前が騒がしい。何が起きたのかわからず、足がもつれるあまり倒れ込みながらドアを開けたら……。
「あ、四季さん。」
「四季先生!おはようございます!」
「四季先生ころんじゃった?」
「四季先生、帽子作ってくれてありがとう!」
「卵焼き食べる?上手に巻けたの!」
ピクニックをしていた。
「え、七瀬? なにこれ。」
「ピクニックですよ。四季さん、起こしに来たのに全然起きないから。」
「ピクニック? ここで?」
「ここで。」
四季先生も座ってと促され、部屋の入り口に座る。女子に唆された七瀬がノリノリで卵焼きを四季の口に運んでくる。
プレゼントで用意していた籠と麦わら帽子は勝手に渡され、喜ぶ姿は見れなかった。しおりの通りにピクニックを進めてるらしく、七瀬に目の前で工程を読み上げられる。寝起きで顔も洗えないまま廊下でレクリエーションが進んでいった。そのうち子どもたちが外に出たがり、庭に駆け出す。楽しいが、悔しいピクニックだったことは間違いなかった。
「四季先生、楽しみで寝れなかったって本当?」
「まあ、そんなところかな。」
「次は七瀬さんに寝かしつけてもらったら? 七瀬さんに撫でてもらうとすぐ寝れるよ!」
「いいですよ、寝かしつけても。」
寝ている間に子どもたちに色々吹き込まれたことを知り、次はちゃんと起きようと誓った。