こうじつ(ノベコン中退避)世界が結倭ノ国だけではなくなった頃、志献官たちはエネルギー節約などの協力をしてくれた都民に向け、感謝のカフェを開こうとしていた。
今日は大事な搬入日。玖苑や三宙たちが選んだ食器を箱いっぱい詰め、七瀬は視界が埋まるほどの荷物を運んでいた。最年少といえど志献官、七瀬は食器の山を軽々と持ち上げていた。
「おい七瀬、危ない。」
「大丈夫ですよ、四季さん。」
「いや足元。」
え、と言った時には膝に机の角がぶつかっていた。作りかけの机はカンナがかかっておらず、七瀬のぶつけた膝は僅かに血を流した。
「あー、悪ぃ。痛かっただろ。」
四季は七瀬から荷物を取り上げて座らせた。工具の入ったポシェットからハンカチと絆創膏を出し、できる限りの手当てをする。
「別にこれくらい舐めておけば治ります。」
「シロやモルチに舐められたら逆に悪化しちゃうだろ。それに、営業停止も嫌だしな。」
自分に店の衛生がかかってると言われると、さすがの七瀬も手当に従うしかなかった。
「あれ?」
手当てをする四季の指もまた小傷が多かった。ずっと家具を手作りしていたからだろう。七瀬が座る椅子もまた、四季の成果物だった。
「四季さんも、指が傷だらけです。ぼくも、絆創膏貼りましょうか?」
問いかけられた四季はにやりと八重歯を見せた。
「いいんだよ、僕は。小傷があればサボれるだろ?」
「! ぼくもサボります!」
「いいけど。」
四季が七瀬の荷物を半分持つ。サボると言っても今任された仕事は果たそうとするのが四季らしい。二人で荷物を運びながら、どこに休憩しに行くか考える。
「遊んでも傷は増やすなよ。」
「四季さんこそ、サボっても手当てはしてください 」