痛み 襲われた。まあ、よくあることだ。アカデミーへの入学を断り、けれどヴァルヴァラに入っているわけでもない存在の己は、こうして襲わることは珍しいことじゃあない。
「こんなところを堂々と歩いているなんて、随分余裕じゃないか」
今日の相手はアナスタシアらしい。そいつの身にまとう紺色の制服から、所属を伺うことができた。
「もうずっと逃げ回っているらしいじゃないか。今日こそお縄についてもらうぞ」
どうにも厄介なことに、向こうはどうにも、こちらを危険因子として見ているらしかった。
はあ、と思わずため息を吐く。上着の中、ずっと持ち歩いている短刀を布の上からなぞる。どうしたものかな、と考えながら、正面に立つそいつを見据えた。
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