💥🐒♀ 傘爆豪は寮で朝食を取りながら天気予報を見る。
降水確率は30%。
降るか降らないか怪しいが、起きたときに窓の向こうの薄曇りを思い出し、傘を持ち出すことにする。
寮の玄関で傘を持ってくのかと揶揄されるが気にしない。
そらみたことか。
土砂降りの中、寮まで駆け出す友人たちをあざ笑い、悠々と傘をさす。
少し歩くだけでも足元が濡れる。
湿る靴下の感覚が嫌になる。
後ろから次々と駆け出す生徒たちの騒ぎ声の中、
聞き馴染のある軽快な足取りに気が付く。
途端、真横から見慣れた尻尾がすり抜ける。
「おい、尻尾」
珍しく一人の姿に思わず声をかけた。
雨の中声が届き、先にいた足がピタリと止まる。
結わえたテールと尻尾がするりと弧を描き、尾白が振り返った。
「爆豪?」呼びかけられた声の主に驚く。
爆豪は尾白に早足でぐっと近づき、尾白を自分の傘に入れる。
「てめぇ、傘ないんか」眉間にシワが寄る。
「え、あ、朝は降る予報じゃなかったし…」
傘の下、目の前の眉間に後付さる尾白に、傘も爆豪もついて行く。
「他のヤツより濡れる面積広ぇんだから、寮の床ずぶ濡れにする気か」
言うが早いか、傘の外に出てゆらゆらと所在無さ気に揺れる尻尾を鷲掴みこちらに引き寄せる。
「えっ…!」
爆豪の予想外の動きと感触に驚く。
尾白はこれ以上爆豪を振り払って歩き出すこともできず、オロオロと視線を爆豪へ向ける。
尾白を傘の下に閉じ込めて、尻尾を掴んで動けずに視線を寄越す様子が心をくすぐる。
「寮まですぐそこだから!それに尻尾まで傘に入らないよ。私はもう少し濡れてるし、爆豪まで濡れちゃうから…!」
気づかいか、この状況から逃げようとする尾白が気に入らない…。
少し濡れてると言う尾白を見下ろすと、いつもはふわりと柔らかな髪はしっとりと濡れ、走って少し上気した頬に雫が伝う。
雫を追って目線を下げていくと、さらされた白い喉に息を呑み…
…はっ、と我に返り目線を戻す。
「チッ…!てめェ風邪引くんじゃねぇぞ!!!」
例えその気がなくとも、色味が滲む姿に目線が泳ぐ。
気付いてしまえば、他の奴らにも見せたくないと独占欲が疼き出す。
ぐるりと向きを変えて、尻尾を掴んだ手はそのままに歩き出した。
玄関に入るとすぐ鞄からタオルを出して、尾白の頭に被せ、懇懇と喚く爆豪の姿があった。