金銀泥に咲く(osmeanthos)花言葉は、隠世。
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泣いてゐる。
蜘蛛の糸の如く甘く絡み付く金色の薫りを振り切って、幽かな聲を頼りに歩む。
気付いて。否、気付かないで。と、蒼瞳が揺る。
啼いてゐる。
暖かな金色の絨毯を踏み分ける足は、柔らかく滑る泥濘に沈み、思う様に立之かぬ。
夜毎白皙に映した薄紅の熱は、真実であったと。不問語(トワズガタリ)の亜麻色の音。
哭いてゐる。
初めての恋だったのだと。はらはらと月光石の珠を落としながら、喉の奥に閉じ込めた聲。
あの子の元に行かなければ。
白銀に煌く華の下へ。
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呼んでゐる。
静寂に燻る銀の薫りと指先は頼り無く、今更伸ばしても届かぬ。
高潔を気取り、馴れていると嘯き、送り出した笑顔を悔む深淵の聲。
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