急に、訳もなく、なんとなんく、疼く瞬間がある。
一時的な物ならしばらく理由を探している間に忘れてしまうのだけれど、いくらか考えてもなにも浮かばず疼きだけが強くなり、さらに熱を持つまでに至るとどうにもならない。
その上、その熱を晴らしてくれる相手が目の前にいて、邪魔も予定もなく、場所も問題ないとなると我慢なんてできやしない。
熱心にサッカーの試合を見ているのを邪魔するのは申し訳ないと思う、のは一瞬だけだった。
テレビに釘付けで少しもこちらを見ないシャルルの首筋に手を伸ばす。
「おわっ!?」
全く警戒していなかったらしく悲鳴を上げて飛びはね距離を取ろうとするのを邪魔するように首に腕を回す。
ぎゅっと抱きついて体を押し付けるようにくっつけば、シャルルも察して抱き締め返してくれた。
ますます熱が上がる。
誘うように顔を上げてキスをしようとして、呆気に取られた。
視線がまたテレビに向かっていたのだ。
抱き締め返した手は背中を撫でるように動いているが、これでは片手間にわがままな子供を宥めているようなものじゃないか!
確かに試合は接戦でせめぎあっていて気になるのはわかる。
自分もこの衝動さえなければシャルル同様試合に集中して見ていただろう。
でも今はそうではない。
日頃滅多にない甘えや我が儘が一気に出てきたのだろうかと思う程相手をして欲しくて仕方ないのだ。
ムッと不機嫌なままシャルルの頬に手を添え、無理やりこちらを向かせた。
「りつ」
諌めようと声を上げたのを幸いとそのまま口付け舌を差し入れる。
一瞬驚きに戸惑ったようだが、すぐに諦めてくれたらしい。応えるように舌が絡まる。
ぴちゃぴちゃという水音も聞こえてくるほどのキス、仕かも自分から仕掛けるなんてずいぶんと久しぶりな気がした。
閉じていた目をうっすらと開けると、いつの間にか熱に浮かされた水色の目とかち合う。
嬉しくて微笑みに目を歪ませると、その水色も同じように歪んだ。