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    崇しづ
    #リプ来たCP及びコンビでSSを書く

    #鏡の国と夜の国

    【崇しづ】 すごい雷の夜まばゆいフラッシュの直後に、まるで、世界が割れてしまったかのような音が轟く。枕を抱きしめ、毛布をマントのように体に巻き付けてドアノブに手をかけていたしづきは、そのままベッドに駆け戻った。ぼすんと勢いよくベッドに滑り込み、掛布団にくるまる。ごろごろごろ…と不吉な音が這いずってこちらにやってくる。しづきはそれが遠くへ行くのを待つと、きゅっと口を結んで、もう一度、ドアに速足で駆け寄った。 そろっとドアを開けると、薄暗く、何処までも続くような長い廊下。見慣れた景色のはずだったが、今夜は装飾品の影から、何かが飛び出してくるような、そんな不気味な気配がするように感じた。 勇気を出して、一歩、冷たい廊下に踏み出す。スリッパをはいているにもかかわらず、ひんやりとした空気が足にまとわりつく。と同時にまた空が光った。そして逃げる間もなく恐ろしい轟音。一瞬、しづきはその身をさらに小さくした。ベッドに戻ろうか、でも…。そんなことがちらりと頭をよぎるが、もうずっとこんなことをしているのにも我慢が出来なくなっている。全てを振り払って走ることにした。ぎゅっと手を握って、走って、走って、走って。ようやく、目的地のドアの前につく。ノックもそこそこに、しづきは最低限ドアを開けて、部屋に滑り込む。中に入るとこちらを見ているのは、部屋着ではあるものの、何冊かの本と何らかの素材を机に広げている、東堂崇継。東堂は、入ってきたのがしづきだとわかると、その眉間の皺を少しだけ緩ませて、「どうした?眠れないのかい?」と困ったような声をかけた。 しづきは、安全基地に入った安心感から、ぎゅっと握っていたシーツを手放し、ずるずると落ちていくソレははらりと床に置いていかれた。白いシーツから抜け出す様に、しづきは崇継の腕の中に勢いよく滑り込む。 「雷の音で起きてしまったのかい?」 「うん…」 小さな手が、触り心地の良いガウンをぎゅっとつかむのを崇継は感じた。 「パパも、寝れない?」 不安げな瞳が崇継の顔を見上げる。 「…あぁ、大きな音がして眠れないなぁ」 「…!僕、一緒に寝てあげる!」 しづきの不安げな顔がぱっと明るくなる。ガウンをつかむ手も力を増しているようだった。 「あぁ、そうしようか。しづきが一緒なら、雷も怖くないね」 崇継の大きく角ばった手がしづきをなでた。その手にすり寄るように、しづきの頭がぎゅっと寄ってくる。本当は、もう少し仕事をするつもりであったが、こう来られてしまうと、崇継は弱かった。 そのまま、しづきを抱き上げた。明かりを消し、ドアを閉めると、雷の音は少し遠のいたようだった。
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    【崇しづ】 すごい雷の夜まばゆいフラッシュの直後に、まるで、世界が割れてしまったかのような音が轟く。枕を抱きしめ、毛布をマントのように体に巻き付けてドアノブに手をかけていたしづきは、そのままベッドに駆け戻った。ぼすんと勢いよくベッドに滑り込み、掛布団にくるまる。ごろごろごろ…と不吉な音が這いずってこちらにやってくる。しづきはそれが遠くへ行くのを待つと、きゅっと口を結んで、もう一度、ドアに速足で駆け寄った。 そろっとドアを開けると、薄暗く、何処までも続くような長い廊下。見慣れた景色のはずだったが、今夜は装飾品の影から、何かが飛び出してくるような、そんな不気味な気配がするように感じた。 勇気を出して、一歩、冷たい廊下に踏み出す。スリッパをはいているにもかかわらず、ひんやりとした空気が足にまとわりつく。と同時にまた空が光った。そして逃げる間もなく恐ろしい轟音。一瞬、しづきはその身をさらに小さくした。ベッドに戻ろうか、でも…。そんなことがちらりと頭をよぎるが、もうずっとこんなことをしているのにも我慢が出来なくなっている。全てを振り払って走ることにした。ぎゅっと手を握って、走って、走って、走って。ようやく、目的地のドアの前につく。ノックもそこそこに、しづきは最低限ドアを開けて、部屋に滑り込む。中に入るとこちらを見ているのは、部屋着ではあるものの、何冊かの本と何らかの素材を机に広げている、東堂崇継。東堂は、入ってきたのがしづきだとわかると、その眉間の皺を少しだけ緩ませて、「どうした?眠れないのかい?」と困ったような声をかけた。 しづきは、安全基地に入った安心感から、ぎゅっと握っていたシーツを手放し、ずるずると落ちていくソレははらりと床に置いていかれた。白いシーツから抜け出す様に、しづきは崇継の腕の中に勢いよく滑り込む。 「雷の音で起きてしまったのかい?」 「うん…」 小さな手が、触り心地の良いガウンをぎゅっとつかむのを崇継は感じた。 「パパも、寝れない?」 不安げな瞳が崇継の顔を見上げる。 「…あぁ、大きな音がして眠れないなぁ」 「…!僕、一緒に寝てあげる!」 しづきの不安げな顔がぱっと明るくなる。ガウンをつかむ手も力を増しているようだった。 「あぁ、そうしようか。しづきが一緒なら、雷も怖くないね」 崇継の大きく角ばった手がしづきをなでた。その手にすり寄るように、しづきの頭がぎゅっと寄ってくる。本当は
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    DOODLEセージとソフィア
    カラフルな旗が風に揺れ、空には誰かが手放してしまった風船が舞う。嘲笑うような花火の破裂音。誰もそんなものは気にも留めない。だって今日は年に一度の感謝祭!(タイトル)
    だって今日は年に一度の感謝祭!深い考え事の最中は周囲に目を向けられなくなる。僕の悪い癖だ。だがしかし、本日は非常に幸運。一通り思考が落ち着いた時、僕が存在していたのは、華やかな祭事の真っ只中であった。

    色とりどりの衣装を身に纏った踊り子が、美しい笑顔を街に振りまき、露店には選りすぐりの菓子や果物、軽食が並ぶ。道の端には酒を飲み陽気に騒ぐ者、何やら難しい顔をして話しこむ者、屈託無くはしゃぐ乙女達。

    ふと、一番近くの露店を覗く。恰幅の良い主人が

    「見ない顔だね、旅の人かい?おいしいよ!食べてきな!ほれ、味見して味見して!」

    とまくし立てながら揚げたばかりの商品を眼前に突き出す。手袋を外し、いただきますと一言。一口サイズのそれをぱくりと口に入れる。歯ごたえのあるサクサクの衣に、ふわふわとした魚介類の具の絶妙なバランス。程よい塩気の甘みにじわりと唾液が口に溢れる。脳内の情報が、これがクロケージャという料理だと告げた。一部の地方に伝わる、伝統的な祭事用の食べ物。
    1776

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    1776

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    DOODLE直輝と那音、10年前のことを小説なんて高尚なものではなくて、妄想を文字で詳細に説明したもの。
    左甲斐直輝(兄、スタイリスト)
    左甲斐那音(弟、家出してろくでもない組織で働いている)
    左甲斐兄弟が喧嘩した話 2002年夏。14歳の那音は、東京へ向かう各停電車に揺られていた。ボックス席の対面の座席に、行儀など知ったことかと脚を載せ、険しい表情で窓の外を睨んでいた。窓の外に見えるのは夏の太陽とそれを受けて鮮やかに煌めく深緑。時々、何かに反射した光が那音の目に刺さる。それでも少年は窓の外を睨んでいた。生来意地っ張りなこの子どもは、備え付けのカーテンを下ろすことすら「負け」だと認識しているようで、ソレが活躍する機会は無さそうだ。ただただ窓の外をキッと睨み続ける。

     那音は不機嫌だった。数時間前に、母親から夏休みの課題はやったのかと問いかけたことがきっかけであった。夏休み終盤に差し掛かるこの時期、どこの家庭でもよく見られるその問いかけ、課題を済ませてしまえと促す言葉、それらが思春期、反抗期真っ盛りの那音にとって気に入らなかった。末の息子が乱暴に返事をすれば、母親も呆れた様に乱暴に返す。他の兄弟も面白がって参加してくる。その全てに那音はイラついていた。その後、大喧嘩に発展し、衝動的に家を出て、今に至る。思い返してみれば本当に下らない。しかしそこで引き下がれないのがこの少年なのだから救えない。
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