クリスマスから年末の話12月25日はクリスマス。
大抵の人は家族や恋人達と楽しく過ごす1日。
今年は静かに過ごすんだろうなーなんて思ってたらこれだよ……
「オイィ、おめーらいつになったら帰るんですかー」
「久々に銀ちゃんの料理たくさん食べれて幸せネ。クリスマスだしまだあるんデショ?」
「ほとんどお前の腹の中に入りましたーもうありませんー」
「嘘アル! こっちの冷蔵庫から甘い匂いがするネ」
「だーっ、やめろそっちのは俺の分! 予想外の来客多数で俺まだケーキも食ってないの!」
相変わらずの神楽節に付き合いながらチラッと高杉を見ると、そっぽ向いて紫煙を吐き出していやがる。クソ、知らんふりしやがって……
そう、今日は高杉と2人で……とか言うとなんか照れ臭いんだけど、俺ら約10年の空白期間があるからね。恋人らしい事とか全然した事ないし……とにかくまあ、2人でまったりクリスマスを過ごすつもりだったんだよ。一応買い出しなんかも行ってさ、ケーキの他にも少し料理作ったり。そしたら来客が1人、2人、気付いたら部屋中に来客者がいたんだよ。
しかもよく食うくせにほぼ手ぶらなヤツばっか。だからあっちゅーまに用意した食事とかケーキとか食われて、最後のケーキだけは死守しようと今に至る。
「神楽ちゃーん、もう夜遅くなってきたからそろそろ帰ろう」
存在感があまりなかった新八にそう言われて冷蔵庫に手をかけるのをやめる神楽。
「んー? そうアルな、邪魔者はそろそろ退散するアル」
あ、邪魔してる自覚はあるんだ……
「じゃあね銀ちゃん、晋ちゃん。夜はこれからアルよー」
「お邪魔しましたー」
そう言って帰って行く2人。
2人きりになれたのは20時を回った頃だった。
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「んー……」
「銀時、起きたか」
寝ている布団の隣から降ってきたのは心地よい声なんだけど……
「ちょ、今何時?」
「朝の7時だな」
「しちじぃ!?」
ガバリと布団を上げて半身を起こしたものの数秒で寒くて布団に戻った。
「何やってんだテメェは」
「いや、思ったより寒かったから……」
「じゃあもっとあっためてやろうかァ?」
「あんだけヤッてまだできんの? すげーなお前」
そう、残った食事とケーキを食べて満足した後は2人だけのお楽しみタイムという事で、それこそ恋人らしい事をしたわけで……
仰向けになってそんな事を思い返していたら高杉の顔が降ってきたからすかさず唇にパーの手をかざした。不満そうな目で見られたけど、そのまま手で顔を離してやる。
「やんないの。銀さん今日も忙しいんです。クリスマスって何だったのかって思うけど普通に依頼入ってるし、帰ったらそろそろ年末年始の準備もしなきゃなの」
「チッ」
「舌打ちすんじゃねーよ。てか、年末年始の準備はお前も手伝えよ」
「手伝ってやるさ。だが、今日は俺も用があってな」
そう言いながら高杉は側にあった煙管盆から煙管を取って流れるような仕草で火を着ける。
「あ、そうなんだ」
「夕方くらいには帰る」
こんな何気ないやり取りが一緒に住んでいるんだという事を実感させられてちょっとだけしみじみしたのはここだけの話。
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「たでーま」
仕事が終わって家に帰ると、高杉の履き物があった。どうやら先に帰っていたらしく、奥から高杉が迎えに出てきた。
「おかえり」
「おう。お前の方が帰るの早かったんだ」
「さっき帰ったばかりだ。だから部屋もまだ寒い」
「そりゃ、仕方ねーわな」
そんな会話をしながら買ってきたものをしまう為に台所へ向かうと、高杉もついてきた。
「今日も寒いし、誰かさんのせいで朝寝坊したから夕飯用の飯も炊けてねーし、どうすっかなーと思ったんだけど、スーパーでいいの見つけちゃったんだよねー」
そう言いながら出したのは生麺タイプの味噌ラーメン。都合良く2食パックだ。
「一緒に買ってきたカット野菜と、前作って冷凍庫してあるチャーシューを入れて……って考えてたら腹減ってきた」
「俺もだ。だがその前に手洗いとうがいをしてこい。年末年始に寝込んだテメェの面倒見るのはごめんだ」
そう言われて手洗いとうがいをした後、台所に戻ると高杉はまだそこにいた。
「お前、寒くないの?」
「寒ィ。さっき暖房つけたばかりだからどこの部屋も同じようなもんだ」
「そ。でもここにいるとお前を扱き使ってもいいって思っちゃうけど」
「……何すりゃいい?」
あれ、何か言って去ると思ったのに。手伝ってくれるのかね。でも何やらせるかな……あ、そうだ。
「高杉、茹で卵2つ作ってくんない? それくらいならお前でもできるだろ」
「わかった」
小さめの鍋を渡すと水を入れて火を着ける高杉。俺も麺を茹でる為に大きめの鍋に水をたくさん入れて沸騰するまで放っておく。
その間にラーメンどんぶりを出して、そこに小袋に入ったスープを入れる。
あ、スープ用のお湯どうすっかな。麺の茹で汁をスープに使うのは違うよなあ……仕方ねえ、沸かすか。でもうちのコンロは2つのみで、麺茹でるのと茹で卵で使っちまってる。考えた結果高杉の方を向くと、俺を見る高杉と目が合った。
「……何ガン見してんの?」
「テメェの表情がころころ変わって面白ェ」
「お前と違って色々考えてんの。あのさ、お前ケトルでお湯沸かしてくんない? えーっと、1人前250だから500ね」
「わかった」
なんだか一緒に料理してるみたいでちょっと楽しくなってきたな。洗う鍋が増えて面倒だと思ったけど、カット野菜を炒めるか。野菜を麺と一緒に茹でた方が楽でいいけど、やっぱ野菜はシャキシャキの方が良いよな。
なんて考えてると、ケトルのスイッチを入れた高杉が戻ってきた。
「高杉、茹で卵多分もういいと思うから水で冷やした後殻剥いて。剥いたらそのまま置いといて」
空いたコンロにフライパンを置いて火を着ける。野菜をごま油で炒めた頃には麺も良い茹で具合になった。
「高杉、どんぶりに沸かしたお湯入れて。250ずつな」
「あァ」
その後湯切りした麺をどんぶりに入れる。麺をスープと絡めて、さっき炒めた野菜と茹で卵を添えたら完成……あ、チャーシュー冷凍庫から出すの忘れてた。
「高杉、ラーメン居間に持ってって。酒はサワーかハイボールがいいな。俺チャーシュー解凍してから行く」
「わかった」
冷凍庫からチャーシューを出して必要分をレンチンする。ま、スープあるし、半解凍でいいだろ。あとバターと七味も持ってこ。
「お待たせー」
そう言いながら居間に入ると、部屋は暖かくなっていて、味噌ラーメンのいい匂いがする。チャーシューをそれぞれのどんぶりに3枚ずつ置いた。
「ほら、バターと七味。入れた方が美味いぜ」
バターを一欠片、七味は適量入れたら今度こそ完成だ。
「よし、それじゃあ……」
「「いただきます」」
手を合わせて食材に感謝。高杉と一緒になってからは特に欠かさずやってる。
味噌ラーメンを一口食った後、缶のハイボールを飲む。
「うめーー!」
「美味いな」
茹で卵を箸で半分に割ってスープに漬ける。こうすりゃ味玉じゃなくても美味いんだよ。
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「いやー、こないだ食った味噌ラーメン美味かったなー」
「そうだな。だが今日は12月31日だ。蕎麦を作るぞ」
そんな会話をしながら今は年越し蕎麦の準備をしている。
なんか俺ら食ってばっかじゃない?
ま、クリスマスから年明けまではしょーがねえか。
それでもまあ、俺は庭で高杉とよく勝負してるから太ったりはしてないからね。こいつと勝負するとすげーカロリー減るからオススメ。
ただし着いて来れるヤツがどれだけいるかはわかんねーけど。
「で、ほんとに蕎麦の準備はお前に任せていいわけ?」
「あァ」
高杉がドヤ顔でそう言うのは理由があって……
最近高杉が日中よく出かけるから何してるのか聞いてみたら、ヅラのところで蕎麦打ち修行してたんだと。
何あいつ、蕎麦打ちなんかできたの? 蕎麦が好きなだけじゃなかったんだ。一応幼馴染だけど知らなかったわ。つーか高杉も他んとこで修行しろよって思ったけど、まあこいつ友達少ねーし、仕方ないかって思う事にした。
「んじゃ、俺はお前が蕎麦打ち終わるまでジャンプ読んでるから、終わったら教えて」
そう言いながらジャンプを持って台所が見える位置のソファーに転がった。
それでも気になってチラチラ見てたけどね。下手すりゃ今夜の飯なしになっちまうし……
結局まあ、そんな心配はなかったし、真剣に蕎麦打ったり、切ったりしてる高杉が新鮮だったと言うか、たまにはこういう姿を眺めるのもいいかなーなんて思ったりもした。
……絶対言わないけど
「銀時、蕎麦の準備できたぞ」
「どれどれ、銀さんが吟味してやろう」
ジャンプを置いて高杉の隣に行って蕎麦を見る。店で出るような全て均一な太さの麺じゃないけど、素人が打った麺にしては十分な出来だった。
「へえー、なかなか上手いじゃん。認めたくないけどヅラんとこ行ったのは良かったのかもな」
そう言って笑ってやると、ほっとしたような顔をする高杉。いつもドヤ顔ばかり見るから、そういう表情は新鮮だった。
「よし、じゃあ汁は俺が作るから頃合いになったら蕎麦を茹でてくれよ」
「あァ」
「蕎麦打ち疲れただろ。水でも飲んで向こうでくつろいでな」
コップに入れた水を渡すと、高杉はさっきまで俺のいた場所に行った。
年越しそばの具は海老天、紅白蒲鉾、葱、油揚げにする。縁起物はたくさん入ってる方がいいだろ。
全部いいとこの具材を買ってくるなりしたから上手く調理しないとな。
あ、油揚げだけは俺買った記憶がなくて、起きたら台所のテーブルに置いてあったヤツ。
人の気配があったら俺も高杉もわかるはずなんだけど、2人共気付かなかったって事は……油揚げが好きな狐が置いて行ったのかもな。だとしたらマヌケな狐だなーと思いつつ、折角あるから有難く使わせていただこう。年が明けたら近くの神社に稲荷寿司でも置いておくか。
具を用意して蕎麦汁を作りながら今年を振り返ってみる。
かぶき町からは少し離れた静かな場所で暮らしているせいか、そんなに大きな出来事はなかったけれども、高杉と2人で充実した日々が過ごせたと思う。
たまに変なのが勝手に遊びに来たりしたけど、こんな所まで来てくれて有難い気持ちもある。
そんな事を思いながら味見した汁は良い味がした。
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「やっぱり冬にこたつで食うあったけえ蕎麦はいいもんだね。あとこの蕎麦美味い」
高杉作の蕎麦は良い蕎麦粉を使っているのか、とても美味かった。
「そうか。この具と汁も美味いな。あとこのサラダも」
具沢山とは言え、蕎麦だけじゃテーブルが寂しいからポテトサラダを作った。
しばらくずるずると蕎麦をすする音とたまにポテトサラダの胡瓜を食う音が部屋に響く。
「ごちそうさま。美味かった」
汁まで飲み干した器に箸を置いてそう言う高杉。たまに出る品の良さにこいつがボンボンだった事を思い出す。
ほぼ同時に食い終えたので食器を台所へ運び、みかんの入ったざるを持ってくる。
「近所でもらったヤツ。多分美味しい」
そう言いながら高杉に1つ渡した。
テレビを眺めながら一緒にみかんを食べる。年末恒例の番組がやっていた。
「いやー、年末だねえ」
「あァ」
「高杉はどんな年だった? 背とか伸びた?」
「背は伸びてねェが、そうだな……穏やかで良い年だった。テメェは?」
「んー……まあ、俺も同じかな。こんな感じで来年もよろしく」
「あァ」
「で、今勝敗どうなってんの?」
「367勝366敗だ」
「じゃあ来年はおめーに勝つのが目標だな」
「へっ、上等だ」
そんな会話をしながら甘くて美味いみかんを食べ終えた。
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おまけ
穏やかに年が明けてから数日経った頃。
ここは高杉と銀時が住む場所の近所にある稲荷神社。
少し前に美味しそうな稲荷寿司がお供えされていたけれど、皿だけになっていました。
「ん、この稲荷寿司うめー」
そう言いながら神社の側にある池の近くで稲荷寿司を食べるのは、真っ白な尻尾を9つ生やした九尾。
「相変わらず食い意地がはっていやがる」
呆れながらそう言うのは池で煙管を持ってくつろぐ龍のような尾を持つ蛟。
「お供えだから遠慮なく食っていいんですー。やっぱあの家にそっと油揚げ置いといて正解だったな」
「あァ? 人間の家に入ったのか?」
「寝静まってる時にね。いつも美味そうな匂いがするから料理うまそうだなーって」
「あんま人間に干渉すんじゃねェぞ」
「わかってるって。あの家だけ特別。なんか俺達と同じ匂いがするんだよ。今度お前も嗅いでこいよ。たまには足生やして歩いてみた方が良いんじゃね?」
「うるせェ」
そう言って蛟は紫煙を吐き出すと、空に舞っていきました。
この地は今日も平和なようです。
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以下のリクエストにそって書きました。
いっぱい食べる2人が大好きなのでクリスマスって何だ?から始まって何故か年越し蕎麦を打ち始めるたかぎんください
隠居でも現パロでも食べ物とイチャイチャ両方でいろいろおなかいっぱいwな2人とかほしいです
答えているでしょうか?
書いていて楽しかったです。
リクエストありがとうございました!