やっぱり嫁の作る飯がいい「たかすぎ〜 俺今日疲れたから外食にしない?」
俺より少し遅れて帰宅した銀時にそう言われた。
本当は銀時の作った食事の方が良いが、疲れているのに食事の支度をさせるのも悪いと思い、構わないと返事をして街に出た。
「高杉、何食いたい?」
銀時の飯、と言いそうになったのを止めた。
「疲れてるなら銀時が決めていい」
「マジか。じゃあどーすっかな〜」
顎に手を置いてきょろきょろと店を物色する銀時。ゆらゆら揺れる銀色の髪が綺麗だと思っていると、ある店でピタリと止まる。
「今日はオムライスな気分だな」
そこは看板にオムライスの絵が描かれた洋食店のようだった。
「……テメェは女子か」
「あ? 俺がオムライスな気分じゃダメなのかよ」
「んな事ァ言ってねェ。ほら、行くぞ」
そう言いながら店の扉を押した。
案内された席でメニューを見ると、よく見る形の良いオムライスや、半熟の卵焼きにデミグラスソースがかかったものなど、色々な種類があった。
「俺これにする」
銀時が指さしたのは半熟の卵焼きにデミグラスソースがかかったオムライスだった。
「俺は普通のでいい」
「セットにするとスープとサラダとドリンクつくってよ。それにしようぜ」
「あァ」
店員に注文を告げた後、来るまで待つ。
いただきますと手を合わせて食べ始めたが、銀時が一口目を食べると、口に入った瞬間表情が変わった。
「うまっ! やっぱ時代はふわとろだよな〜」
「好みの問題だろ」
そう言いながら俺も一口目を食べた。
オムライスの看板を提げている事もあり、普通に美味い。
だが、何かが足りない。
美味そうに食う銀時の姿を見ながらスープやサラダも含め、完食した。
+++
寒空の中帰宅。
遅い時間だとどこも閉店モードだから寄る気にならなかった。
家の暖房を入れながら銀時に話しかける。
「なァ銀時」
「んー?」
「今度さっきのオムライス作ってくれ」
「え?」
「テメェが作ったのが食いてェ。できるだろ?」
銀時を見ながらそう言うと、銀時は少し照れたような表情になる。
「まあ、できるとは思うけど……」
「材料が足りなきゃ買ってきてやる」
「えっ、今すぐじゃないよね? 今度の土曜とかでいいだろ」
「あァ」
「じゃあ金曜の夕方に材料買ってくる。お前は形のいいオムライス派だよな?」
ふわとろか、普通のかって事か。
「銀時が作るならどっちでもいい」
そう言いながら部屋着に着替えるべく、自室に行った。
+++
土曜の昼になった。
ソファーでくつろいでいると、卵を混ぜる音が聞こえてきた。
キッチンでは銀時が鼻歌を歌いながら料理をしている。銀時が料理をしている姿を見るのは好きだ。だから眺めていたスマホを置いて銀時を見つめる。
「あ、皿出すの忘れてた。たかすぎくーん、皿出しといてー」
そう言われて棚からオムライスが入りそうな皿を2枚出して置いた。
「さんきゅー。お前暇だろ? 冷蔵庫にレタスと胡瓜あるからサラダ作っといて。ミニトマトも添えろよ」
「わかった」
俺の我儘に応えてくれてるんだ。それくらいはやる事にした。
サラダができる頃にはオムライスもできていた。形は普通の方にしたらしい。
そんな銀時はケチャップを持って悪ガキな表情をしている。視線の先にあるオムライスを見たものの、そこに描かれた絵を見て溜め息を吐いた。
「おい、何描いてんだ」
「ウ⚫︎コ」
「食欲が失せるだろうが」
そう言いながらスプーンで形を崩してやる。
「あっ! 傑作だったのに」
「だったらこっちは俺のだ。テメェの分にならいくらでもウ⚫︎コを描きな」
そんなくだらないやり取りをしつつ、オムライスとサラダ、インスタントのコンソメスープがテーブルに並んだ。
俺にはこないだの店のものよりよっぽど美味しそうに見える。
いただきますをしてから一口食べると、こないだのよりも何倍も美味い味がした。
「美味い」
しみじみそう思いながらオムライスを食す。
「これで満足かよ」
「あァ」
「今度あのフルーツ専門店のパフェ屋連れてけよなー」
「いいぜ、いくらでも連れてってやる」
そう返事をすると、嬉しそうな銀時と目が合った。
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こないだお店で食べたオムライスが美味しかったので、そこから高銀に置き換えて色々想像させていただきました。
幸せな高銀がたくさん見たいです。