エリオットの災難これは夢だ。悪い夢だ。
エリオットは空き教室の片隅で荒い息を繰り返した。
走って、とにかく走って、誰もいないこの場所に逃げ込んだ。
そして窓ガラスに映る自分を見て、体の動きを止めた。
大きめの三角の耳、全身は赤茶色の長毛に覆われ、ふさふさと立派な尻尾は自在に動く。
戸惑うチョコレート色の瞳と目が合う。
俺はエリオット・ハワードのはず。
だが、今の自分はたった一匹の猫にしか見えない。
そんなことあるわけがない。
あるわけはないのに、目の前に映る猫も自分同様酷い顔をしている。
「ニャア」
試しに出してみた声は、やはり猫そのものである。
落ち着け、落ち着くんだ。
貴族たるもの、予想外の事態に直面しても冷静さを失ってはいけない。
その為にはまず、何が起きたのか思い出さなければ。
朝はいつも通り、漂う冷気とシリルの声で目覚めた。
エリオットは朝に弱い。……脳が覚醒するまでに少し人より時間がかかるだけとも言う。
かくして朝から熱いダージリンを飲み、何度も欠伸を噛み殺した。
とはいえ校舎に入りさえすれば、エリオット・ハワードは栄えある生徒会役員として模範生徒となる。
学業において貴族たるもの申し分ない態度でこなし、選択授業であるチェスも対局を終えると一足先に教室を後にした。
廊下にカツカツとエリオットのブーツが奏でる足音が響く。
そう、その後に……足元に何かが転がってきた。
「なんだ?」
エリオットが下を向いたその時、転がってきたそれは音を立てて割れた。
咄嗟に目を瞑ったものの、一瞬のうちにピンク色の煙に包まれ、次に目を開けると世界は一転していた。
…… to be continued
明日からまた一週間が始まりますね。
Afterまでには書き終えたいと思います。
(たぶんAfter以降は供給過多で召されてると思いますので)
私は動物が好きです。なので軽率に猫化させたくなるんですけど、魔術のある世界ならなんのその!
ご都合主義というやつでエリオットには猫になっていただきましょう。
ちなみに種類はソマリをイメージしてます。
猫になってしまったエリオットに降りかかる災難とは?!(小さな大冒険、お楽しみに)