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    Lys_sw

    @Lys_sw

    エリオットに狂いだした新参ばあや

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    Lys_sw

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    お題箱「ルイスとロザリーさんの小話」
    ……すみません。依頼者様の望むものではないかもしれません。
    思いのほかリンとグレンがめっちゃ出てきてしまいました。

    第一優先は妻昨日の晩のルイスは大変にご機嫌であった。
    面倒な依頼を片付けまくった結果、明日は休日。
    報告書も速やかに提出し、一秒たりとも無駄にしたくない愛する妻との時間を満喫するつもりだった。
    なのに、なのに……何が楽しくて、休みの日まで馬鹿弟子の顔を見て過ごさねばならないのか。
    答えは実に明快だ。
    怪我ばかり繰り返すグレン手当てをするロザリーにたった一言。
    「貴方の弟子なんだから、もっとちゃんと見てあげるべきよ」
    でなければ、せっかくの休日にロザリー以外を優先するわけもない。
    「し、師匠……今日、なんかいつもよりきつい気が……」
    「私は寛大なので、これぐらいで済んだだけでも良かったと思いなさい」
    目の前で情けなく倒れ込んでいる弟子は恨めしそうにルイスを見上げる。
    「……今日はもうこの辺にしますよ。少しとはいえ私の貴重な時間を割いたんですからね」
    さて、ロスタイムはあったものの、まだ時間はある。
    これからロザリーと夫婦の時間を……無言で自分の足元に縋りつくグレンを払う。
    「……グレン」
    「まだっス」
    いつもはすぐへばって修行から逃げ出すのに、これはどうしたことか。
    グレンは残念ながら頭が上がるほうではない。
    つまり何か明確な理由があってルイスを足止めしているのだ。
    「何を企んでいるのか知りませんが、それに乗ってやるほど私は優しくありませんよ」
    だが、ふと妻の言葉が過った。
    目の前で這いつくばっているグレンは、あまりにもぼろぼろでこれでは妻の顔を顰めてしまう可能性がある。
    「んんんn……」
    その場にしゃがみ、一応持っていた回復薬を馬鹿弟子に飲ませておく。
    安いものではないが、ルイスのメンツを保つためには安い。
    薬が効いてくるまでの間さえ、ルイスの頭の中はこれから過ごす時間のことで頭がいっぱいである。
    「本音を言えば、自力で戻ってこいと言ってやりたいところですが、私は良い師匠なのでね」
    雑にグレンを担ぐ。
    「ちょ、ちょっまだ体に力がァァァァ」
    「舌を噛んでも知りませんよ」
    弟子がごちゃごちゃ煩いのはいつものことだが、その日の飛行は音速。
    「ぐぇ」
    自宅に着くなりグレンを地面に落とし、ノック。
    「私です」
    愛する妻の出迎えを期待していたが、
    「想定より早すぎる帰宅です。ロザリー様の許可は降りておりませんので、もう一っ飛びしてきてください」
    愛想のない馬鹿メイドに締め出される。
    ドンドンッ。感情に合わせて思いのほか強く叩いてしまった。
    「扉が壊れますとロザリー様が困りますので、どうぞお引き取りください」
    「リン、私はこの家の主人です。速やかにドアを開けなさい」
    「以前カーラに聞いたことがあります。家主というのは家を守る存在であると。そうなりますとやはりルイス殿とはかすりともしませんので、ロザリー様の指示に従うことにします」
    ぴくぴくと口角が引きつる。
    これが自分の契約精霊なんて信じられようか。
    「リン、三つ数える間に扉を開けないと、お前の愛しいカー」
    ドンッ、扉がけたたましい勢いで開く。
    「おかえりなさいませ、ルイス殿」
    とはいえ、扱いやすいと思うことも少しはある。
    リンに目を回しているグレンを預け、
    「ロザリー、帰りましたよ」
    にこやかな笑みで駆け寄ると、妻はなんともいじらしく唇を尖らせて唸った。
    「もうリンってば、あと少し時間が欲しかったわ」
    「申し訳ございません、ロザリー様。悪いのは私の愛する人を引き合いに出した姑息なルイス殿です」
    「ロザリー、まずは愛する夫におかえりのキスをください」
    「ロザリーさん、御馳走できたっすか!」
    なるほど、そういうことですか。
    愛する妻はルイスの為に御馳走を用意し、この馬鹿弟子は時間稼ぎをしていたというわけ。
    随分と可愛らしい。
    「グレン」
    たった一言名前を呼ばれただけで、グレンは何やら説教をされるのではないかと怯え、静かに後退をした。
    少しくらいは褒めてやってもいいと思ったけれど、師匠に対して随分な態度である。
    「……お前はもう少し、師匠を労わりなさい」
    教育しなければならないことはまだたくさんある。
    ルイスは片眼鏡に触れた。
    「ほんと、問題児っていう意味ではよく似た師弟ね」
    ロザリーはくすくすと笑って、キッチンへと戻る。
    ルイスとしては予定は狂いっぱなしだが、項垂れ縮こまるグレンに説教を垂れながらその顔には作り物ではない笑みが浮かんでいた。
    思えば、この騒がしさも久しぶりだと。
    ルイスは七賢人になってから毎日飛び回っている。おべっかばかりの貴族連中や癖のある七賢人に貼り付けた笑みを浮かべて。
    本人としては、第一目的が達成され、次は一刻も早く妻と過ごす時間を優先したいのだが、そちらはどうにも邪魔が多い。
    彼女を幸せにするために選んだことなのに、なかなか上手くいかないものだ。
    最近は毎日帰り道を急ぎながら考える。
    もしもこんな生活に嫌気がさして、いつか彼女が自分を見限ってしまう日が来てしまったらその時はどうするのかと。
    彼女のわがままを聞けたらこの悩みもほんの少しは解消されるのだが……人知れず小さくため息を吐き出す。
    でもそれは二人っきりになってからにしよう。
    まずはルイスがこの世で一番好きな愛する妻の手料理をグレンより多く平らげることに集中しなくては。
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