恋とはどんなものかしら⑤終 「私は失恋したんだな。」
久しぶりに子供のように泣いたせいでガンガンと痛む頭とは対照的に、気持ちはさっぱりしていた。さっきまで途方に暮れていたというのに、イマイチ引きずらない所も自身の良さである、と滝夜叉丸は理解している。
どうしようも無いのだから、好きでいるしかないし、結局考えてみたら何をどう振舞おうが4年間見せてきた自分を塗り替えるほどは変われないし、それにその自分だってずっと魅力的だったはずだ。いつもそうだった。結局滝夜叉丸は悩んでも、いつもの素敵な滝夜叉丸に戻ってくるのだ。だから、またその「いつも」を取り戻そうと、タカ丸の部屋にあった鏡を覗き込んだ。
部屋の主は、さっき部屋を訪れた三木ヱ門と共に席を外していた。落ち着くまで居てもいいし、出ていってもいい、と気遣いの言葉を残して。戸の前に居たらしい三木ヱ門は少しだけ様子を伺うような素振りを見せたが、目が合うと慌てて逸らされた。不器用なヤツらしい、不器用な優しさを感じて、また少し目頭が熱くなった。
3196