石乙散文 その日も乙骨と深いキスをした。そのキスに、最近は乙骨も慣れてきて、自分から石流の舌を受け入れるようになったし、乙骨の方からも触れてくるようになった。
「ふぁ、は、ぁ……」
それでもキスをした後の顔は赤いし、目はとろんと蕩けてる。そろそろキスだけでなく身体も触っていいだろうかと思い始めていれば、乙骨が「あの…」と口を開いた。
「今日は…僕からも、していいですか?」
「あん…?」
「その……いつも、石流さんの方からしてくれるけど、僕からもしていいですかって…」
キス……と小さい声で続ける乙骨に、石流は瞬きをした後、フッと笑った。
「いいに決まってんだろ」
そのままぎゅっと抱き締めてやれば、乙骨がうわっと、こちらに身体を傾けてくる。一度は石流の胸に身体を落としてから、顔をあげてこちらを見上げてくる。その角度も既にクルが、乙骨はそこから、自分からのキスをご所望だ。
「ほら、しろよ」
「目、閉じて下さい…」
「あいよ」
言われた通りに目を閉じる。すると視界が遮られて、聴覚が僅かに鋭くなった気がした。
はぁはぁという、乙骨の息づかいが感じられた。それがゆっくりと近づいてきて、ちゅっと唇に何かが触れる感覚がした。
しかし、それからどうするかと思いきや、その感触はすぐに離れてしまった。
「…おい、俺がオマエにしてるキスはそんなもんか?」
苦笑しながらそう言ってやれば、乙骨が「わ、分かってますよ!」と言ってくる。それから、顔の両端に触れられた感覚があったと思ったら、再び唇に何かが触れた。先程とは違って、ぶちゅっと深くだ。
「はぁ、ン……」
乙骨がちゅっちゅと啄むように、石流の唇をはむはむ食べるみたいに触れてきて、くすぐってぇと思って口を開けば、そっと舌が入ってきた。
乙骨の舌は恐る恐るといった感じで、石流の口内を撫でてきて、その感触がむず痒くてたまらなかった。
「ん、はぁ…うん、ふぁ、あ……」
どうにももどかしいから、にゅるりと自分の舌で乙骨の舌に絡みついた。そしたら驚いたように乙骨が腰を引かせるから、おいおいと思って逃げられないように、その腰を抱き寄せた。
「はぁ、ン……ふぁ、ふぅ……は……」
いつの間にか主導権はこっちに移っていた。逃げるように石流の口内を出て行く乙骨の舌を追い掛けるようにそのまま、乙骨の口内への侵入した。そうなったらもういつものキスで、でも最近はそのキスに慣れていたはずの乙骨が、辿々しい反応をするものだから、うっかりそれを攻めたくなってしまった。
乙骨の舌を絡め取り、撫で回しながら唇を貪り続ける。腰を抑えられたまま身体を後ろに引こうとした乙骨が、バランスを崩して上体を傾け、ポスリと座っていたベッドの上に倒れ込んだ。
「ふ、はぁ……あ、はぁ……」
深いキスを終えた後の乙骨の顔は上気していて、目も真っ赤で潤んでいる。はぁはぁと荒い息を刻む唇はべっとりと唾液で濡れていて、色っぽいにも程がある。
「……おっこつ…」
石流はそんな乙骨に覆い被さりながら、額にちゅっとキスをした。
「…からだ、触っていいか?」
「え……」
「シャツの中だけ、少しな?」
そう言って、するりと、脇腹のあたりに触れれば、身体がピクンと震えたが、乙骨はおずおずと石流を見つめ「どうぞ…?」と言った。なんだその言い方と思いつつも、礼も兼ねてその唇に触れるだけのキスをした。
それからするりと、シャツの中へ手を入れる。暖かい乙骨の肌に掌を這わせれば、乙骨が「ん」と僅かに声を漏らした。
「乙骨……」
呼び掛けながら、顎下や耳元にちゅっちゅと口付けていき、手は脇腹から胸下へとあがっていく。
「ん、う……」
それから胸の先端を親指でぐいっと押してやれば、「ひゃっ!?」と乙骨が驚いた声をあげた。
「ちょ、そこ……なにすんですか…!?」
「…オマエ、乳首で感じるのか?」
「んなわけないでしょ!?」
乙骨がそう声をあげるが、まぁ確かにさっき上げた声は、色気の欠片もなかった。
それでもぐいぐいと刺激してやれば「や、止めて下さいよ…!」と乙骨が身を捩った。
「ぼ、ぼく…女じゃないんですから、胸なんて触られても…」
「まぁそうだろうけど、しっかり性感帯は増やしておかないとな」
「はっ…!?せっ…!?」
何を言い出すんだという顔で見てくる乙骨に、チラリと視線を向けた。
「…セックス、させてくれるんだろ?」
「…っ、それ、は……」
「男同士だと何かとムズいのは俺も分かってんだよ。気持ち良くなるには、そうなるための準備も必要なんだ」
石流が真っ直ぐ乙骨を見つめてそう言えば、乙骨の視線が揺れた。
「…そのために、必要なことなんですか?」
「そーだ。オマエの負担を少なくさせるための準備だし、オマエの身体にキモチイイを覚えさせる準備でもあるんだ」
そう言ってやれば、乙骨は少し表情をムッとさせつつも「分かりました」と頷いた。
それを確認してから、再び乙骨の乳首を擦り、首元にはペロリと舌を這わした。
「ふぅ、ン……」
乙骨は少し呻きながらも、石流が与える刺激をそのまま受け入れている。その反応が愛しくて、きゅっと乳首を摘まんでやれば、「ン!」と腹のあたりが浮き上がった。
「ちょ…!」
乙骨が抗議じみた声をあげたが、構わず、シャツをめくりあげて、もう片方の乳首にカプリと食いついた。
「へ、ぇ…!?」
そこを唇で吸いながら、先端を舌で撫でていく。乙骨の腰が浮き、「ひゃっ!」と高い声があがった。
石流がチラリと視線を向ければ、乙骨が顔を真っ赤にさせて口を抑えている。それにニッと目元で笑って、ちゅるちゅると更に乳首に吸い付いた。
「はぁ、ン…ちょ、いし、ごおり、さ…!」
最後にざらっとした舌で撫でてやれば、乙骨の身体がぴくぴくと震えた。
「はぁ、あ……」
顔を起こせば、しゃぶりついた乙骨の胸は赤く熟れピンと上を向いていた。指で弄っていた方も、弄る前より擦れて赤くなっている。そして何より乙骨の顔が真っ赤になっていて、それを石流から隠すように逸らしていた。
「…乙骨」
自身の唇をペロリと舐めてから、石流は言った。
「……オマエ、普通に素質ありそうだな」
「……なんのですか……」
乙骨は呆れたようにそう言うけれど、石流は内心楽しみだな、と思いながら、乙骨の頬にちゅっと口づけた。