石乙散文 石流さんとのキスは気持ちいい。触れ合う唇の感触や、絡め合う舌の熱さ、夢中になって思考がぼやけるのも、クセになる。彼の首に腕を絡めて、必死に唇を押し付けて、彼も身体を抱き締めてくれて、身体を密着させて、蕩け合うみたいに。
「ン、ふぁ、あ……」
名残惜しげに唇を離せば、ペロリとその舌で唾液に塗れた唇を舐められた。うひ、っと目を閉じている間にちゅっと触れるだけのキスをされた。
「…っ、いしごおり、さ…」
ゆっくりと目を開ければ、石流さんもじっとこちらを見ていて、しばらく見つめ合った。こうしているのもいいけど、もっとキスしたいなと思っていれば、石流さんがクスリと苦笑した。
「…オマエ、今、自分がどんな顔してるか分かってんのか?」
「え…?」
どんな顔?と疑問符を浮かべていれば、頭を撫でられながら、ちゅっと額にキスをされた。
「オマエ、そんなに俺が好きかよ?」
そしていわれた言葉に、思わず「ん?」となる。
誰が誰を好きだって?
「……僕が、石流さんことを?」
思わず首を傾げてしまった。
「僕……石流さんのこと、好きなんでしょうか?」
嫌いではないと思う。
それこそこうやって抱き合ったり、キスをしたりするのだってそう、気持ちいいし、不快になんて思わないし。
でもそれがイコール好きだとは限らないと思う。
仲間としての好き?友人としての好き?
それもイマイチしっくり来ない、一緒に戦う他の呪術師や、同級生の友達ともこんなことはしない。
石流さんだから?だから、石流さんのことが好きってこと?
そうなんだろうか?
改めて、石流さんの顔をまじまじと見て考える。この人を想うと、心の中がほんわり暖かくなるのは、この人が好きってことなんだろうか。
そんな僕の問いに、石流さんは、パチクリと瞬きをした後、呆れたように「自覚無しかよ!」と言った。
「オマエの顔も身体も、俺のことが好きだってしっかり言ってるぜ?」
そしてそんなことを言われて、ぎゅっと抱き締められる。
「顔も身体も好きって言ってるって……それ、どういうことですか?」
「オマエが分かりやすいってことだよ」
「……そんなこと言われたの、アナタが初めてなんですけど」
自分でも気付いていない感情がダダ漏れなんてそんなの恥ずかしい。思わず顔を背ければ、石流さんは笑ってほっぺたにちゅっとキスしてきた。
「安心しろよ、気付いてるのはどうせ俺だけだ」