Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    ぎょー

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 👍 💓 🔆 😉
    POIPOI 6

    ぎょー

    ☆quiet follow

    現パロ長義さに。10/1は眼鏡の日でネクタイの日でコーヒーの日なので。

    ##長義さに
    ##刀剣乱夢
    ##現パロ

    ネクタイ緩めてコーヒーを飲む眼鏡ちょーぎくん(現パロ)「待たせてすまない」

    カフェのざわめきの中、耳に飛び込んできたその声に、意識が本から現実へ引き戻された。自分でも分かるほどぱっと顔を輝かせながら目を向けて―瞬間、目を見開いてヒュッッッと息を吸い込んだ。

    「いっっ……え全然大丈夫、たとえ大丈夫じゃなくても今大丈夫になった……」
    「ん?」
    「ううん何でもない、デス」

    片言の敬語で動揺を隠そうとする私に僅かに小首を傾げながら、長義さんは向かいのソファに座った。腕にかけていたスーツのジャケットを軽く畳んで座面に置き、流れるように首元に右手をやって、ネクタイに指を引っ掛けて、首を僅かに捻りながら少しだけ引っ張り、

    「わァ……ぁ……!」
    「どうしたのかな、さっきから」

    少し怪訝そうに尋ねられてしまい、ナンデモナイデスともごもご誤魔化す。言えない、「ネクタイ緩める仕草〜ッ!手つきえっち!そのかっちりした襟と首筋の間に住みたい腕の血管と袖の間でもヨシ!スーツ萌え極まれり!」とか「何そのシンプルな眼鏡!たぶん仕事用のやつ付けっぱなしなんだろうけど!イケメンと合わせて素材の良さで殺しに来とるんか!?私が眼鏡好きと知っての所行か!?」とか心の中で叫んでますなんて言えない。
    お付き合いが続く中で、被った猫もお互いに少しづつバレてきてはいる。特に私が。とはいえ、こういう性癖丸出しの叫びを面と向かって言えるほどではない。そもそも公衆の面前だし。ただでさえ久しぶりだったデート当日の朝になって休日出勤の連絡が入るという憂き目を見た彼氏殿である。半日みっちりいっぱい頑張ってえらい労徒に余計な心労をかけるのは本意ではない。

    「スーツだとますます大人っぽいなって思って。休日出勤お疲れ様でした」

    えへへと笑って誤魔化しながらメニューを差し出した。ありがとう、と返してくれる声にも僅かに疲労が滲んでいるように思う。
    彼はコーヒーと軽食、それに期間限定のケーキを「少し糖分がほしい。ひとくち味見させてくれるかな」と遠慮させない口実を与えながらさくっと注文して、ふうとひと息つく。

    「お仕事、大変だったんですか?」
    「トラブル自体は大したものではなかったんだ。ただ処理に無駄に時間がかかってね……おかげで昼過ぎまで待たせてしまった。あれぐらいならすっぽかしてやればよかったな」

    じとりとした目をしてぼそりと最後に呟く姿に、思わず頬が緩んでしまう。何だかんだ内に入れた人への面倒見がいい彼のことだ。本当に仕事をすっぽかすつもりはないのだろうけど、そんな愚痴を零してくれることとか、拗ねる姿を見られることとか、それだけで胸がキュンとしてしまう。

    「長義さんならリカバリー頼めるって頼りにされたんでしょ?映画はしばらくやってるし、気にしないでください」
    「今の君と過ごせる時間は今しかないんだよ」
    「うわーッここにイケメンがいます!」
    「知ってる」

    長義さんもくすくすと笑って、先にサーブされてきたコーヒーを手に取った。長い脚を組み伏し目がちにコーヒーカップを傾ける姿は、このままぱしゃりと撮るだけで雑誌の1ページを飾れそうだ、と思う。眼鏡も相俟って、整った容姿と知的な雰囲気が読者を魅了してしまうことだろう。

    「ん、香りが良い」
    「へえ、いいですね」
    「味見する?このくらいの酸味なら君も好きそうだ」
    「!?いやその、ダイジョブです」
    「そう?美味しいのに」

    彼はふふ、と笑いながらカップ越しに流し目を送ってくる。確信犯め!というかいつの間に私の好みを把握した!ときめいちゃうだろ!
    タイミングの良いことに残りの注文が届いたので、ほんのり熱を感じる頬を隠すべく、逃げるように俯いてケーキにフォークを差し入れる。―逃げた先で待ち構えられていたと知るのはものの1分後だった。

    「俺もひとくち欲しいな」
    長義さんの声に、そういえばそういう話だったと思い出す。まだ数口しか食べていないケーキを長義さんの方にお皿ごと差し出しかけて、私はびし、と固まることになる。

    「あ」

    あ、じゃないが!?口を軽く開けてこちらを見ていた彼の目が、すうっと細められる。

    「ひとくち、欲しいな」
    「ご、ごじぶんで」
    「ん?」

    その柔らかな声ひとつで、震える手でフォークを差し出してしまう自分が憎い。

    「あー……甘いな」
    「そりゃケーキですからね……」
    「それはそうだけど。君のことだよ」

    乗り出した身を戻しながら、頬杖をついてにこにことこちらを眺める彼をじとりと見返す。長義さんは、楽しくて仕方がないと言わんばかりの顔をしていた。

    「今日はいつにも増して対応が甘いなと思って。やっぱり、これが効いたのかな」

    言いながら、白い指が黒いフレームをつうっとなぞる。ウワア眼鏡をくいっとやる仕草がこんなに様になる人っているんだな。他人事のような感想が思考を通り過ぎていく。

    「めっ、珍しくて気にはなってましたけど別にそんなんじゃ……前にもPC用にブルーライトカットグラス使ってるの見たし、お仕事の日はしてるのかな、お疲れ様だなって……」

    言い訳めいた言葉を連ねていた私の脳裏に、ふと少し前にした会話が過ぎる。

    「……ブルーライトカットグラスは効果がないっていう研究結果の話、前にしてましたよね」
    「話が早いな。まだ実験の余地はあるそうだが興味深いね、という話だったかな。では、何故俺は今もこれをかけていると思う?」
    「……体感では効果を感じてるから?」
    「それも無くはない。が、いちばんの理由は」

    そこで言葉を切った長義さんは、形の良い唇を歪め、美しい微笑を浮かべる。
    「君が喜ぶと思ったから。……どうかな」

    アクリルレンズ越しの不敵な視線。瞬きを3度繰り返したその瞳が、ほんの少し不安げに揺れる。……つまり何、私が喜ぶだろうって、そのために眼鏡してたのこの人?性癖がバレていたショックよりも鋭く、特大のきゅんが私の胸を貫いた。とんでもなくお似合いです、好き。顔を覆いながら蚊の鳴くような声で漏らした私を見て、長義さんは満足気に微笑んだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works