下着を買いに行くドマ♀「ケンチン、今日帰り買い物行く」
「なんか買うのか?」
ケンチンの膝の上でおやつを食べながら、放課後の予定を決める。
「ブラジャー」
「ぶっ……」
オレの言葉に、ケンチンが飲んでたコーラを吹きそうになった。大丈夫?
「スポブラやめて、ちゃんとしたの買う」
今までこだわりもなく楽ちんだからスポブラを着けてたんだけど、ちょっと女っぽいのを着けてみたいと思ったんだ。
「エマとかと行った方がいいんじゃねーの」
「ケンチンに選んでもらうの!」
ケンチンに可愛いって思ってもらいたんだから、ケンチンに選んでもらわなきゃ。
ケンチンは下着屋行くの恥ずかしいって言うけど、放課後無理矢理ケンチンの腕を引き渋谷のショッピングモールに行った。
「ケンチン何色がいい?」
「……ピンク」
「ケンチン色だな」
ケンチンのイメージカラーにくふくふ笑っていると、いよいよケンチンは気まずそう。店に着いても、中には入ってくれなかった。仕方ねぇから中でピンク色のブラを二つ手に取り、外で待つケンチンが見えるとこまで移動する。
「ケンチン、これとこれなら!?」
ケンチンに聞こえるように大きめの声を出したら、ケンチン以外の奴もこっちを向いた。オレケンチン以外眼中にねーし、知らねー。
「……右」
ケンチンは花柄よりレースが好き。覚えた。店の中に戻って、ふんふん鼻を鳴らしながら棚を眺める。
「よろしければサイズお測りしましょうか?」
「ハイっ!」
店員さんに声をかけられ、初めて買うからサイズを測ってもらうことにした。
「A65ですね」
「……A?」
試着室でメジャーを見ながら告げられた言葉に、オレは衝撃を受けた。今まで考えたことなかったけど、オレっておっぱいちっちぇーの?打ちひしがれて、そのままとぼとぼケンチンのとこに行く。
「マイキー?どうした?」
手ぶらで戻ってきたオレに、ケンチンは不思議そう。残念なお知らせだよ、ケンチン。
「ケンチン、オレAカップなんだって」
「おう」
オレが重大発表をしたというのに、ケンチンに平然と頷かれた。
「は?言われなくても分かるとか思ってんの?ぶっ飛ばすぞ?」
「なんでそんなキレてんだよ」
メンチきって腹パンしようとしたら、慌てたケンチンに手を握られる。
「こんなちっちぇーとさぁ、着ける意味なくね?」
「意味はあるだろ」
自分の胸元を見下ろしても、全然膨らんでねぇもん。
「可愛かったじゃねぇか、さっきのやつ」
だけど上から降ってきた言葉に、オレはばっと顔を上げた。
「……可愛かった?」
「おう」
言って欲しかった言葉をもらえて、オレのテンションは急上昇。
「ケンチンがそう言うなら、しょーがねーから買おうかな」
いそいそとケンチンから手を離し、店へと戻ることにする。
「後で着けてんの見てね!」
ケンチンのために買うんだし、これは絶対。
「これください!着けて帰ります!」
さっきケンチンが可愛いと言ったピンクレースの上下セットを掴み、元気よく店員さんに声を掛けた。
「ケンチン!そのまま着けてきた!」
「……聞こえてた」
オレは元気モリモリになったけど、戻ったらケンチンが項垂れてた。なんで?