0721の日『自いしないと出られない部屋』
朝起きて、寝室に見当たらない恋人を探しに行こうと扉に向かう。すると扉にそんな文言が書かれた白い紙が貼られていた。
「なんだこれ」
「ケンチン見たー?」
このバランスの悪い字は、明らかにマイキーの字である。扉の向こうからオレの動く気配を察知したらしく、声を掛けてくる。
「自いってなんだよ」
「ケンチン知らねぇの?オナニーのことだよ」
「漢字知らねぇのオマエだろ」
慰の字が書けなかったらしく、ひらがな混じりで読みにくい。
「で、なにこれ」
「オレ、ケンチンのオナニー見たことねぇなと思って」
まぁ、ヤりたくなったらマイキーのこと抱くしな。一緒に住んでて一緒のベッドで寝てる恋人だぞ?オナニーする意味がわかんねぇ。
「見たい!から見せてくれるまでここから出さねぇ!」
バンと扉を開けて入ってきたマイキーは、すぐさま扉を閉めてオレの前に立ち塞がった。
「朝飯を食いたかったオレを倒せ!もしくはオナニーしろ!」
楽しそうだな。わけわかんねぇこと喚いてるマイキーをどかそうと腕を掴んだら、当たり前のように腕を回して抜けられた上足払いされそうになった。現場は一触即発である。
「オナニー!オナニー!」
「マジでやめろ」
手拍子と共にコールされるんだけど、これでその気になるヤツいんの?
「お願いケンチン!オレケンチンのことならなんでも知っときてぇもん」
「……わかった」
最終的にぶりっ子で上目遣いするマイキーに、オレはあっさりと陥落した。