「いいかげんにしてってば!」(マコタツ)酔っぱらいの介抱は面倒臭い。元来、白鳥龍彦という男は、面倒見がいいわけでもないので、給料が発生するわけでもない飲みの場でのシゴトなんて、全くやりたくないのである。
目の前にはニコニコと笑う上司が一人。いつもタツヒコに優しい笑みをくれる真虎であったが、酩酊状態の笑顔はいつもの微笑みとは一味違っている。
「もー、やめてくださいよ真虎さん」
タツヒコは参っていた。酔っぱらった真虎が、自身のくるくるの髪の毛を指先で遊び続けていた。鳥の棲みたい、綿あめみたいと様々なものに例えながら、タツヒコを放そうとはしない。いつもの頼りがいのある上司から、子供っぽい姿のギャップは悪くないが、少し前からタツヒコはトイレに行きたかった。
「このままじゃ漏らしちゃいますよ~!」
泣き言をいうタツヒコに真虎は笑うだけだった。タツヒコは真虎がさっさと寝ることを願いつつも、真虎ごとトイレに駆け込む覚悟を決めていた。