ひと目で義理と分かるチョコ ルーシアスは疲れ果てていた。書類がどんどんと降り積もり、机の上は雪捨て場のようになっている。士官になると決めたのは自分自身とはいえ、愚痴のひとつも言いたくはなる。詰め襟を緩め、首の周りを自分でほぐすと、ガチガチになった筋肉が悲鳴を上げた。
「っおお〜〜……」
事務室には人気がなく、足元から上がってくる冷えと首筋から入ってくる冷えが、疲労を尚更濃くする。日中に外の仕事をすると、夕方には書類仕事の山が積み上がっている。自然の摂理とはいえ、まだ経験の浅いルーシアスには如何ともしがたいことだった。
しんと静まり返った部屋と、がらんとした事務室に、湯沸かし器が立てる音だけが心細く響く。帝国語の慣れない書類に目が滑り、ルーシアスは天を仰いだ。
1988