Lollipop【ポチデン】 沈みかけた陽が、遠くに見える山の端の隙間から見え隠れしている。今日悪魔が出現した場所は、家から離れていた。行きこそ送迎されたが、倒した時に浴びた真っ赤な体液を厭われ、否応なしに捨て置かれた。
デンジはポチタと帰路を歩いていた。他に替えがない一張羅は、果汁を飛ばされたかのごとく薄桃に色づいている。嗅いだことのない甘い香りをほのかに漂わせていたが、あれは一体何の悪魔だったのだろうか。
「ここからだと、相当歩くだろうな」
「ワン!」
腹減ったなあ。デンジの呟く声はポチタの足元に落ちたが、刃で悪魔を切り裂いたポチタは元気にスターターロープの尻尾を揺らしている。その先端、引っ張り手の三角型がゆらゆら動く様子を見ていると、不思議と腹の虫が静かになった。
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