揃っている ざわざわとまではいかない喧騒が、しかし、一秒毎に賑やかになっていく気がする。もうすぐお目当てのものが始まるから、そのためだろう。
皆、混み合うと知っていながら、こうやって一所に集まるのだ。風物詩というものの影響力はすごい。まあ、自分も例に漏れない訳だが――と、思案しているときだった。こちらへ向かってくる、早い足音が聞こえて。
「遅くなった、ごめん……。……あっ」
菫色がはめ込まれた双眸が揺れて、丸くなる。駆け寄ってきた彼は俺の爪先から肩までを視線でなぞって、呟いた。
「灰色。同じ」
おぼこかった瞳が細められて、今度は艶やかさを纏った。息を切らして紅潮した、いつもは真っ白な頬。額に前髪を貼り付けている汗。そのせいで、余計に色気が助長されている。なにより、彼の出で立ちがいつもとは違うし。
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