とても気に入らない綿の塊が二体と、とても愛らしいぬいぐるみが二体。
「なにそれ、呪骸?」
「なにそれ?これ、俺と羂索のふわ○いとの○キャラだって。電池も入れてないのに、自動で動くんだって!」
「いや、もうそれ完全に呪骸だよね?」
髙羽が呪術高専から貰ってきたらしい呪骸は、私と髙羽の住む狭い部屋で生活する事になったのだった。
◆◆◆
存外、ふわ髙とのる髙は愛らしく私の周りでチョロチョロとしている。
ふわふわしている体は、私が力を入れたら壊れてしまいそうだった。
人間の髙羽と同じギャグがやりたいらしいが、のる髙はまず二足歩行が出来ずに打ち拉がれている。
ふわ髙の方は、小さな手足を頑張って動かしてふわふわと言いながら私を呼んでいた。
「何かな、ふわ髙?」
「ふわっとわいふわ!」
「んぐっ!」
短い手足を必死に動かして、髙羽と同じポーズを取ろうとしている。
あまりの可愛さに胸を押さえていると、不安そうにのる髙が私の周りをぴょんぴょんと飛んでいた。
ここがもしや、楽園だったのではと思いながら、出来ていたかチラチラと見てくるふわ髙に手を伸ばす。
「出来ていたよ。頑張ったね」
「ふわー!」
嬉しそうにふわふわと鳴くふわ髙を潰さない様に、撫でると手にふわふわとした感触が伝わる。
やはりここが楽園だと、思った瞬間だった。
「ふわー!!」
別の耳障りな鳴き声が響き、ふわ髙を撫でる私の手に何かが当たる。
よく見れば、綿の塊が抗議する様に鳴いていた。
綿なのにうるさいなと思いながら、両手でぐっと潰すように持ち上げる。
「綿のくせに、人にぶつかるってどんな心境なわけ?」
「ぶわっ」
生意気にもジタバタと暴れる綿の塊を、ぐっぐっと力を入れて両手で潰す。
意外にも綿の塊の生命力は強いらしく、まだ抵抗を見せてくる。
呪骸なんだから、呪力で祓うべきかと思い付いたが今度ははり線で頭を叩かれた。
「ちょ、羂索!何やってんだよ、可哀想だろ」
「髙羽……そいつが先に手を出したんだよ?」
「だからって、ぬいぐるみ相手にムキになるなって。あと高○一○さんの持ち方やめな?優しくしてあげてよ」
髙羽は私の手から綿の塊を奪って、縦になってしまった綿の形を整えていた。
どうやら髙羽は、綿の塊の事を気に入っているらしい。
面白くないと思った矢先に、綿の塊がニヤリと笑う。
綿の塊のくせに、黒幕よろしくな顔で笑うなと睨む私を他所に。
ちゅっと髙羽の唇を奪って、これまた綿の呪霊に乗って逃げた。
「っ、綿の塊風情が!!」
呪力なんて生温い事を言わずに、術式で片付けてやると叫ぶ。
そんな私を慌てて止める髙羽とふわ髙、のる髙が加わり、私は忌々しい綿の塊を睨み付けたのだった。