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    r__iy1105

    田中新兵衛に心を狂わされた
    禪院直哉は可愛いと思う

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    r__iy1105

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    31日間で宿虎になる話。
    毎日サボらず、上げてくSS
    一日目

    一歩足を踏み出すだけで、壊れてしまう薄い氷の上をお互い歩く。
    どちらかが、踏み抜いてしまえば最後。
    お互い歩いているその場は、ひび割れて奈落へと一直線。
    だから、お互い壊れないようにゆっくりと。
    ゆっくりと歩いて、適度に良い距離を保っている。
    そうでなければ、きっと俺もあいつも氷を踏み抜いてしまうから。

    【一日目:虎杖視点】

    宿儺の生得領域で、叩き落とされた水面から起き上がらずに水の上に浮かぶ。
    今日も今日で、俺は宿儺に一発入れられるか入れられないかの瀬戸際で負けた。
    いい加減諦めろと言う様に、宿儺は骨の山の上で俺を見下ろす。
    「もう終わりか?」
    何となく宿儺に返事を返すのが嫌で、向けていた視線を逸らして目を閉じる。
    水面に居るせいか、やけに自分の心音が大きく聞こえる。
    一定のリズムを刻む心音が心地好くて、意識自体が飛びそうになった瞬間だった。
    「おい、小僧」
    隣で水飛沫が上がり、顔に当たる水滴に目を見開く。
    ぱらぱらと降り注ぐ水と一緒に、宿儺が俺の側に居た。
    そんなに俺が反応しなかったのが、つまらなかったのだろうか。
    有り得ない事を考えて、開いた目で隣の宿儺を視界に捉える。
    「生きてる」
    「返事すら出来ぬ位弱ったかと思っていたが、まだ強がる余力はあるらしいな」
    起き上がろうとする俺の肩に足を置いて、また水面へと押し倒す宿儺を睨む。
    「だったら足、退けろっての!」
    肩に置かれた足を持ち、ぐっと力を入れて押し返す。
    宿儺も宿儺で、本気で力を入れていた訳じゃないらしく簡単に足を払う事が出来た。
    その隙に起き上がり、宿儺に視線を向けるとケヒッと笑って俺を見つめていた。
    「ほら、さっさと来い」
    くいっと手を曲げて、俺を煽る様に手招く。
    それを合図に、地面を蹴って宿儺へと向かう。
    殴る前に視界が裂けて、宿儺が指を動かした事だけが最期に見た光景だった。
    次に目を覚ますと、何時も通りの自分の部屋のベッドの上。
    「……帰すならもっと優しく帰す事、出来ないのかよ」
    ベッドの上で、右手を天井へと伸ばす。
    そこには宿儺の口は無いが、そっと唇に寄せた。
    唇から伝わるのは、自分の掌の感触。
    気付かれてはいけない、氷を踏み抜いてはいけない。
    「宿儺……」
    名前を呼んで、手を包むように頬へと寄せてから目を閉じた。
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