初恋の実らせ方が分からない。
生きてきた中で、恋らしい恋もせずに過ごして来た弊害がここに来てやってきた。
「初恋って実らないんだよなー」
「はぁ？君が初恋って何」
「……何で居るのって聞く方が野暮かな！？」
「それで、君。何処の誰に恋したの？女になったからって、惚れやすくなったとか言わないよね？」
羂索が、やけに噛み付いてくる理由が分からなくて俺は口を噤む。
俺の術式が自分に掛かった結果、俺は長年慣れ親しんだ男の体から女の子になってしまった。
最初は戻る事に必死で頑張ったけど、全く戻る気配がなくて最近は諦めつつある。
それと同時に、面倒を見てくるこの男。
羂索の事が、相方関係以上に好きだと自覚した。
性別が変わったから心境も変わったのか、それは俺にも分からない。
「ねぇ、聞いてる？」
「いだだ、聞いてる！聞いてる！」
思い切り頬を引っ張られて、羂索に意識を戻すと不機嫌そうに俺を見ている。
女になっても扱いは少ししか変わらない羂索に、何処かホッとしている自分も居た。
だから、まだ暫く羂索には黙っていようと思う。
「だから、初恋って何？誰にしたの」
「えーっと、まだ内緒で。俺も気持ちの整理が付いてないし」
「何それ。場合よっては赤も辞さないからね」
「多分大丈夫だよ、羂ちゃん」