夏油家は代々、所謂やくざ家業の家だった。
何の因果が、私と夏油傑は今世は双子で産まれてしまった。
最初は記憶がなかったらしい傑は、甲斐甲斐しく私の世話を焼いていた。
家族愛は強いらしく、記憶を思い出した今でもそれなりに仲は良い。
ただ、家業を継ぐ話になると別だった。
父親は私か傑のどちらかを継がせたい様だが、御生憎様私も傑も家業に興味がない。
「継ぐなら、傑で」
「悪いけど、警視総監様の息子と付き合いがあるかは私もパスだよ」
「警視総監の息子って言っても、妾の子だろ。私はお笑い芸人になりたいんだ」
「奇遇だね、私もだよ。それに羂索の思考は一般社会には馴染めないだろうから、大人しく継ぎなよ」
そんな言葉の攻防を、繰り広げていたある時だった。
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