冷えた夜「リョータ」
冷たい風が頬を刺し、背を丸めないと歩けないような夜、リョータがいなくなった。
2人で作った夕飯を悪くないなって笑いながら食べて、冷えるからって湯船で30まで一緒に数えて、ベッドに横になって今日の楽しかったことをお互いの腕の中でくすくす笑いながら言い合っていたのに。家中を探して、どこにも居ないことに気づいた時はどうにかなるんじゃないかってほど声を張り上げたし、流石の寝惚けた脳みそもこの時ばかりは覚醒した。近所や、駅、大学もチームメイトの家まで探しに行って、でもどこにも居なくて、今また家の中でリョータを探してる。
攫われたのかもしれない、身長だって小さいし鍛えているとはいえ抱えられたりしたら誘拐されることだって全然ありえる。コンビニに行こうと思って事故って病院に居るのかもしれない。
もしかしたら…、もしかしたら、オレに愛想を尽かして出て行ったのかもしれない。
「リョータぁ」
無事だったらそれでいい、そう言ってあげたらいいんだろうけど、俺は強欲で頑固だから、早くこの腕の中に抱きしめて好きだって言って欲しい。
徐々に明るくなる空から二人の居場所を守るように、重たいカーテンをぴっちりと閉め切った。