たまの休日 夜もいよいよ更ける頃。
「いつ終わるんすか」
凭れるように手元を覗き込まれ、左半身に伝わる体温に意識が吸われる。
湯気のたったマグカップを両手で包み、ちみちみと深津特選ブレンドを飲む姿は、今ではもう見慣れたものだ。
「まだ掛かるから先寝てて良いぴょん」
殺さんばかりの繁忙期も落ち着き始め、焦がれた恋人との念願の逢瀬を存分に満喫したい…、が、深津は早く上がるために持ち帰った仕事を片付けなければならなかった。土曜日曜と休みではあるが、せっかくの可愛い恋人と過ごせる休日くらい仕事から解放されたい。そのために、必ず今日眠りにつくまでにこの仕事たちを終わらせなければならないのだ。
かき混ぜるように緩くうねった柔髪に指先を差し込むと、驚いたのか重そうな睫毛をパシパシと瞬かせ、懐いた猫のように指先にぐりぐりと額を擦りつける。
「…やだ」
この土日は深津サンとデートするんだと、締め切り前に無理やり原稿を上げたリョータはもう既に眠いはずで、やけに溶けた目元や薄く開いた口元が、それを雄弁に物語っている。
「随分甘えただぴょん」
「そうだよ、たのしみだったんだから」
つんとそっぽを向いたくせに、くっ付いた体は少しも離れることはなく、本人は気付いてないのだろうが形の良い耳はほんのりと色を帯びていた。
「可愛いな」
「…馬鹿言ってないで、早く終わらせてよ」
いじらしくて愛おしくて、自分よりも小さい身体を腕に抱き込めば、戯れているのか抵抗しているのか。
抜け出そうと捩る身体を、逃がすまいとぎゅうぎゅうに抱き締め、もちついた艶色な頬に口付けを落とした。