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    copperzipper

    @copperzipper

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    copperzipper

    DONEヒョウスパ♀小説
    !女体化  先生とJKの話
    (読んでいただけるのなら ひとつ前に上げた話を読んでからのほうがいい…かもしれない)
     この学校ではバレンタインの名目で行うチョコレートの譲渡が禁止されていない。生徒間は勿論、生徒が教師に贈ることも、教師が教師に贈ることも許されていた。その寛容による被害を、男は一等受けていた。あらゆる学年の生徒や教師は勿論、日頃我が子が世話になっているからというもっともらしい理由を携えた保護者までも、男に甘い菓子を渡しにくるのである。しかし男は嫌がらない。いつも通りの笑顔に困惑を一匙加えた顔で頭を掻きながら丁寧に受け取っては即座に愛らしくラッピングされたマシュマロを渡し返した。最早周知のことで、男からの間のない返答を誰も悲嘆しないし怒りもしない。皆、答えがわかりきっていてなお、男に何かしらの好意を贈らずにはいられない。四方へ去った人間の数だけ四方から人間が増えるこの慌ただしくも複雑な環境の影響もあるのだろう。身なりはやや悪いがとかく愛嬌のある若くて穏やかな男は安直に好かれるはずだし、反して男は誰のことも好きにならなかった。生徒の悩みもくだらない世間話も等しく丁寧に耳を傾けたし、教師同士の飲み会にも参加するし、保護者の愚痴にもうんうんと頷いて付き合う。だが、蒲公英を分解してスケッチをし、あらゆる細胞を顕微鏡越しに観察し、猫とじゃれ合っては引っかかれ、拾った蜻蛉の羽を空に透かしている方がよほど好きという男だった。
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    copperzipper

    MEMOヒョウスパ♀小説
    !女体化  双子ダブルカプの話
     彼らは一時間に一分間だけの口づけを許されていた。それが終わると何事もなかったように十二時の方向へと淡々と進んでいく長針を、取り残された短針が時々震えながら見つめている。恋人たちを引き裂き、二十二時が今日も無事に生まれたのを確認しておれは席を立った。あらかじめ話してあるので、誰も引き止めはせず、また来週だのお疲れさまですだのごちそうさまですだのを口々という。じゃあ、の一言で一括返信する。現時点の会計を支払い終えて外に出るなり寒さに身震いした。けれども身をすくめるよりも先に恋人を見つけたので嬉しくなる。
     おれが駆け足をするよりも恋人がやる大股歩きのほうが早い。飛び立つ前の烏のように腕を広げ、挨拶よりも何よりも先におれを抱きしめた黒いコートの冷たさに驚いた。飲み会を、十時に抜けることは事前に伝えていたし、早まることも遅くなることもないとわかっていたはずだ。なのに恋人の体は天然の冷房によって一時間分は冷えていた。名前を呼ぶ声が呆れと喜びで震えていた。ばかだな、とは続けない。仕事のため、体裁のため、交流のため、どれが理由でも人と飲み食いをし談笑をする機会はおれにとっては貴重で楽しくて嬉しい。それでもお前が嫌と言えばおれは行かない。昔のお前はおれ以外の人間ともセックスしていたが昔のおれは別にいいと許したし今も気にしていないから今更負い目を感じる必要もない。我慢しなくていい。我儘を言っていい。だというのに恋人は、嫌そうな素振りを見せないままいつも通りの笑顔でおれを送り出したあと、リビングの壁と向き合いながら寝転がってしばらく静かにしているほうを選ぶ。兄と、恋人の兄から苦情が来ているが、おれに言われても困る。恋人の決めたことだ。
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    copperzipper

    DONEヒョウスパ♀ 自分メモ  !女体化
     町で一番小さな産婦人科の前に町で一番大きな高校の学生服を着ている少年が座っている。種を落とそうと俯く一本の向日葵の下で、レンズもフレームも分厚い眼鏡の奥で黒く大きな目を輝かせながら蟻の行列を眺めている、そんな少年だった。蟻は昨日死んだ蝉を一口ずつ咥えて飽きもせずに粛々と巣まで運んでいる。アスファルトで隅々まで埋めたはずのこの道のどこかに蟻の巣の入口が存在し、すぐ足元で今も孵化しているはずの幾多の蟻の幼虫が餌を待っているのかと思うと不気味であるが、体育座りをして観察する少年に持ちかけたところできっと同意は貰えそうもない。蟻の献身的な働きによりいまや殆どの肉も体液も失い、しかし翅と腹以外の外殻はほぼ欠けることもなく寧ろ黒黒とした艶も残ってうつくしいまま、二度目の空蝉となりつつあるこの命にも手を合わせることはないこの少年は、何かを訴えるように至るところでしつこく鳴いている蝉の声にも、すっかり黄色をくすませて老いた目線を向けてくる向日葵にも、世界中の悪を見張らんばかりに厳しく照りつけてくる太陽にも、怪訝そうに少年を一瞥しては去っていく大人たちの足音にも、スポーツドリンクを片手に遠巻きに少年を見つめているわたしにも、やはり関心がなさそうだった。ただ小さな蟻たちが歪な線を長く長く描いているのをにこにこと見ている。伸びた髪と皺の浮いた制服といやに派手な柄のマスクで肌という肌を隠し、しかし汗を掻いている様子すらない。この世のものではないのかもしれない、と思いついてしまった。なにせ産婦人科の前にいる少年だ。産まれることを望まれず口ができる前に殺されたはずの赤子が実は生きていてすくすくと育っている。意外にも恨み辛みをこぼさず、誰にも祝福されていないはずなのに割と楽しく健やかに生きている。馬鹿な妄想だ。大方、母親か姉の付き添いでやってきたのを退屈で外に出てきたのだろう。
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    copperzipper

    DONEヒョウスパ♀小説
    !!虫!! !女体化  先生とjkの話というよりは先生の話 自分メモです
     その男が生まれ落ちて六年が経った頃には花の蜜を吸う蝶にそっと手を伸ばして擦り潰すのが好きな子供に育っていた。幼い力でも簡単に砕けた翅で、手のひらがきれいになるからだ。特に隠そうともしていない息子の趣味に気づいた両親はたいそう嫌がり、怒り、不安に思い、蝶を幼虫から育てさせることにした。無垢の罪を償わせようとした。受け取った一枚の葉の上にあるという卵は、目を凝らしてようやく見つけた。とても小さいくせに、すっとまっすぐに立っていた。やがて孵った青虫は手足のない全身を必死にくねらせて脱皮を行っては体を太らせ、食って出すを繰り返すのに飽きたらぴたりと動きを止め、固い殻になった。たった一本の糸で歪と化した体を器用に支え、出てくる時にはあのうつくしい翅を持って飛ぶという。不思議だった。大抵の生き物は最初から親と同じ形で生まれてくるのに、どうやら虫だけはそれに従わない。子供の力でも容易に死ぬ軽い命が、急になにものよりも特別で神秘的なものに感じた。青虫と蝶を繋ぐ、蛹のことが気になった。青虫は祈るように天を仰いだあとに蛹になった。蛹の中身が気になった。この中で何が行われているのか気になって仕方なかった。虫かごの内側に取り憑いた蛹を剥がし取り、鋏で切断すると、クリーム色の泥が学習机の上に飛び散った。子供心に驚いた。蛹の中身が、青虫の緑色でも紋白蝶の白色でもなかったからだ。指で掻き分けてみても、黒い芯のようなものは見つけたが、やはり青虫の名残も蝶の予感も見つからない。ただ、至るところがひくひくと動いている。驚きが、面白いな、に変わった。このどろどろしたものすべてが青虫で、すべて蝶に変わるだなんて思いつかない。しかし彼らは誰かからそうなるようにと命令を受け、奇跡を起こす。もっと知りたくなった。指で集めて手のひらの上に乗せて握りしめる。優しく握ったつもりだったが、命だったものはぐちゅりと柔らかく音を立てた。
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    copperzipper

    DONEルチスパ お笑い芸人コンビをやっているふたりの話
     幼馴染たちに口やかましく誘われ、ついてはきたもののショッピングモールはやはり退屈しか売っていない。地下駐車場とショッピングモールを繋ぐエスカレーターが、利用者がいなかろうと健気に働いている姿を眺めながらオレンジジュースを飲んでいたとき、エスカレーターを挟んだ向こう側に備えられていたトイレから男が飛び出してきた。どこもかしこも紫がかった男だった。誰かが炭酸グレープを力強く振り回して躊躇いなく蓋を開けたのかと思うほどの激しさだったが、俺の目は霞むことなく、その男が泣いていることを見つけた。
     男は、その長身痩躯のどこから生まれるのかと首を傾げたくなるほどの膨大なエネルギーを発していた。大股でずんずんと歩き続けてショッピングモールをあとにするつもりだったのだろうが、自動ドアのごく僅かな段差に躓いて転び、歪な大の字の形になって少しの間動かなくなった。真面目で無慈悲なガラスドアが何度も男の足首を痛めつける。再び立ち上がったときには別人の背中になっていた。炭酸の抜けたグレープジュースがよろよろと出ていくのを、俺はオレンジジュースを飲み干しながら見送る。
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