Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    くらむ

    @kolumnsvn

    リス限はbio欄で成人済と高卒済が分かる方のみ。TwitterDMまたはプロフ欄のwaveboxでTwitterIDを記載して申請いただければ条件を満たしている方はリスイン致します。
    DM申請は @kolumnsvn @kolumnssl どちらでも。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🌟 🎈 💛 💜
    POIPOI 64

    くらむ

    ☆quiet follow

    🌟🎈
    それは、貴方の為の

    #司類
    TsukasaRui

    ワンライ『期待』『いつもと違う』(第97回お題拝借) ワンダーステージでの公演が終わり、寧々とえむを送迎する車が遠ざかっていく。
     練習は暗くなる前に解散するが、公演となればそうはいかない。
     帰宅時に送迎が必要になるのは明確だった。
     …車が見えなくなったので歩みを始める。
     珍しく話が振られることが無かった為ふと疑問に思い横を向くと、ちょうど司もこちらに顔を向けた。

    「……類さえ良ければ…なのだが。…少し、寄り道をしないか」
    「寄り道?」

     急にどうしたのだろうか。
     疑問に思いはしたがこの後の予定は無いのだから、答えはひとつだ。

    「勿論、構わないよ」
    「!…そうか、良かった」

     特に目的地も告げずに歩いていく司についていく。
     人の多い通りを抜け辺りに誰もいなくなると、手を繋がれた。
     繋がれたことで、今回の寄り道の目的を悟った。
     最近は新しい演目の調整で忙しかったため、あまりこういった時間を過ごすことが出来ていなかった。
     自分たちは恋人同士とはいえ、互いに一番なのはショーだ。
     例え恋人の部屋…なんなら家に二人っきりだとしても、目的がショー関連ならやることはショー関連しかないのだ。

    「どこに行くんだい?」
    「…気分転換に散歩をしていた時、良さそうな場所を見つけたんだ。いつか、類を連れていきたいと……思っていた」
    「それは……期待が膨らんでしまうね」

     会話はあまりなかった。
     ただ無言のまま、目的地までの道のりを歩いていく。
     それでも…繋がれた手から届く温もりと共にある静かなこの空気は、とても心地が良かった。

    「着いたぞ」
    「……これは、凄いな。よく、見つけたね」

     高台な所にあった小さな休憩所と思わしき場所から見える景色は、とても綺麗だった。
     暗くなった為よく見える建物の明かりが、都会では見ることの出来ない星空のように散りばめられていた。
     ここにたどり着くまでの人通りの少なさ、そして誰も居ない小さな空間が合わさり、幻想的な雰囲気が漂っていた。

    「何度かここに来ているが、人とあまり会うことがなくてな。二人で来るのに、丁度いいと思った」
    「この景色を、僕らだけが……」

     景色を眺めていると、手を引かれ近くのベンチに座る。
     座りながらでも結構見えるようだった。

    「それにしても、ここはとても静かだね」
    「あぁ、少し離れたところにあるからだろうか、音があまり届かないようなんだ」

     サァッと風が吹く。
     少し、寒くなってきてしまったかもしれない。
     自業自得な薄い服装に後悔をしていると、首元に何かが当たった。

    「もう寒くなってきたのだから、防寒はきちんとしろと言っているだろう?」
    「………これは?」

     首元に巻かれたのはとても暖かいマフラーだった。
     最初は司のものを貸してくれたのかと思ったが、変わらず同じものを首に巻いている。
     どういうことか思考していると「お前が、いつも薄着だから…」と珍しく小さな声で話し始める。

    「言ってもすぐに忘れてしまうから、風邪をひいてしまわないよう……お前の分も用意した」
    「…へ、ぇ………?」
    「つ、作ったのではないぞ!?たまたま…たまたま店でお前を思い浮かべるような綺麗なマフラーがあってだな...」

     どこまでが本当でどこまでが嘘なのかは分からないが、ただ一つ、自分を思って用意してくれたことだけは確かで。
     この景色も、この小さな空間も、このマフラーも、全てが。

    「…温かいなぁ……」
    「そ、そうだろう!なんといっても、オレが類の為に用意したマフラーだからな!」

     ぽつりと漏れた言葉に、少し勘違いをした返答が返ってくる。
     本当のことを言うのは恥ずかしいから、そういう事にしておこう。

    「…フフッ。司くんが、僕の為に」
    「う、ぅ…繰り返さんでいい……照れるだろう…」

     司が顔を逸らし、立ち上がる。
     その顔は赤く染っており、少しからかい過ぎてしまったかもしれない。

    「とても嬉しかったんだよ、ごめんね。素敵な時間をありがとう、司くん」
    「…あぁ。喜んでもらえたのなら、準備した甲斐があった」

     再び差し出されたその手を取り、いつもより小さな歩幅で帰路を歩き出す。
     温かい心地のする手は、喧騒が戻ってくるまでの間繋がれていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    たまぞう

    DONE先にポイピクに載せます。
    日曜になったら支部に載せます。
    将参のお話。この間のとはセカイは別になります。
    ちょっと痛いシーンがありますがそこまで酷くないです。
    寧々ちゃんが森の民として出ますが友情出演です。
    最初と最後に出ます。
    何でもいい人向けです。
    将校は参謀と同じ痛みを感じて(物理的)生きたいというよく分からないお話ですね。
    誤字脱字は見逃してください。それではどうぞ。
    将参(友情出演寧々)「ねぇ、その首の傷痕どうしたの?」
    「っ、っっ!?」

    仕事の休憩中に紅茶を飲んでいた時のこと。
    正面の窓から現れた少女に私は驚き、口に含んでいた紅茶を吹き出しそうになった。

    「っ、ごほ…っ、げほっ、ぅ………。来ていたのですか…?」
    「うん。将校に用事があって……というか呼ばれて」
    「将校殿に?」

    森の民である緑髪の少女ーーー寧々は眉を顰めながら、私の首をじっと見つめている。そこには何かに噛み千切られたような痕があった。

    あの日のことを話そうか、少し迷っている自分がいて。
    どうしようかと目線を泳がせていると、寧々が強い力で机を叩く。

    「ほら!話して!」
    「………わっ…!わかり、ました」








    あまりの気迫に押された私はぽつりと語り始めた。
    6486