エンジョイ勢vs過激派② その日、◯◯は事務職員主任の吉野作造に声を掛けられ、伝蔵へ渡す書類を預かった。とにかく伝蔵への届け物は◯◯に任せておけば大丈夫、みたいな不文律が出来上がりつつあるのだ。毎日コツコツ積み上げた実績(ストーカー)のおかげだ。◯◯は喜んで拝命した。
伝蔵なら今日の戌の刻から出張のはずで、今の時間は授業を終えて職員室だろう。いつだって伝蔵のスケジュールをがっつり掴んでいる◯◯なのだった。
◯◯はルンルンと足取りも軽くスキップして、なんなら鼻歌まで口ずさんだ。物陰に隠れず大手を振って堂々と山田先生に話し掛ける機会など、こんなときにしかないので。
しかし、職員長屋を突っ切り目当ての部屋の近くまで来ると、◯◯はすん…と足音を忍ばせた。──クセになってんだ、音殺して動くの。
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