三月十四日――人の世ではホワイトデーと呼ばれる日の、夜遅く。
騒がしい本丸の喧騒から少し離れた庭先で、水心子と清麿は高く昇った真夜中の月を眺めていた。
ひと月前にバレンタインデーという催しを盛大に楽しんだこの本丸ではその返礼代わりとしてささやかな宴が開かれており、その宴席は日付が変わった今になってもまだまだ盛り上がっていた。
何かとノリが良いこの本丸はささやかな催しのつもりがいつの間にか大騒ぎになっていることが多く、宴も朝方まで続くことが多い。参加自体が任意であり夜が更けるにつれて少しずつ各々の部屋に戻るものも増えてくるから、水心子と清麿も一通り宴を楽しんだ後に連れ立って部屋まで戻るところだった。
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