──「死」。それはこのテイワットの理の外に座している蛍にも存在する概念であり、いずれ訪れる未来。遠ざけることは出来ても避けることは出来ないもの。数多の危機を乗り越えて来た蛍であるが、やはりその存在には身震いする。内側から破裂しそうなほどに沸騰する高熱をもたらす病、相手の剣の切っ先が己の喉へと差し迫る戦闘、──そして生涯共にあるだろうと信じて止まなかった半身との別れ。鳥肌立つ思い出を振り返ればキリがない。もし「死」がいつしか必ず直面する最大の恐怖であるならば、生きている今という時間は覚悟を決めるための猶予とでも言うのだろうか。そのために今日まで幾度も体験したくない出来事に身を置いてきたのだろうか。
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