12/12:長めのマフラー ジークフリートがサラとダヌアから貰った毛糸のマフラーは、縦に伸ばすと自分の身長を大きく越えるほどの長さだった。
編むのに夢中で想定よりも長くなってしまったと肩を落とす二人に、純粋な喜びからの感謝を伝えて早速着用して見せる。すると、近くを通りかかった服飾に詳しい団員達がこぞって集まり、お洒落だからと敢えて長いマフラーを選択することもあれば、長いからこそ出来る巻き方があるなど、会話の流れで衣服の流行りについて様々な指南を受けた。
話を聞いている内に話題は変わり、気がつけば一番似合う巻き方や格好は何なのかと盛り上がり、挙げ句の果てには他の団員達も巻き込んで、ちょっとした試着会が団内で開催されたことがあったと、ジークフリートは隣を歩くランスロットに語った。
「相変わらず、グランの騎空団は賑やかですね」
そのファッションショー、俺も見たかったなぁと、ため息のように呟く彼に、ジークフリートは思いついたことを尋ねる。
「ランスロット。お前なら俺にどんな巻き方を提案する?」
先程までの柔らかい表情が一変し、ランスロットは俺ならですねと戦場に立つ姿さながらの気迫で悩み始める。
結論が出るまで、ジークフリートが何気なく辺りを見回していると、一本のマフラーを二人で巻いて歩く、幸せそうな若い男女の姿が目に入る。
ああ、そういう使い方をする者もいるのかと関心を抱いていると、思案の旅を終えたらしいランスロットが同じ方向に視線を向けた。男女のマフラーの巻き方に気づくと、ランスロットは指先でそっとジークフリートの上着の袖を掴む。
「あ、あれは、違います……!」
決まりの悪い表情で何かの言い訳をする水色の瞳に対し、ジークフリートはただ首を傾け、いつの間にか、先ほどよりも頬が赤く染まっているランスロットに、このマフラーを掛けてやるべきだろうかと考えていた。