噛み癖。「いたっ!」
「あぅ…。」
「ちょっと司!いいかげんにしろって!」
「レオさんがかまってくれないからです。」
最近、司の噛み癖が酷い。ストレスからなのかおれに噛み付いては怒られている。身体中司の歯型だらけで外で服を脱ぐなんて絶対にできない。
「だからって、噛み付くことないだろ〜?」
「自分でもわからないのです、でも、無性に噛みつきたくなってしまって…。」
「はぁ〜。」
「うぅ…また噛みたくなってきた。」
「ちょっとおれ、相談に行ってくる。」
「どこにです?」
「そういうの詳しそうな奴のとこ。」
「そうですか。」
「行ってきまーす。」
「お気をつけて!」
まずはセナのとこ行ってみよ…あいつすぐ人に噛み付いてるからな…。
「ごめん急に。」
「なんなのぉ〜?相談って。」
「司の噛み付きが最近酷くってさぁ…見てよこれ。」
「ちょっとなにこれれおくん歯型だらけじゃん!あんた一応アイドルなんだからね?」
「だからこうして相談に来たんだよ!」
「ん〜かさくんはなんでこんな噛み付いてんの?あんたなんかした?」
「おれはなにもしてない!司はかまってくれないとか言ってたな。」
「う〜ん…もっとなんか、遊んであげれば?」
「なるほど…?」
「そしたら少しはマシになるんじゃないのぉ〜?」
「わかった!帰ったら遊べばいいんだな!」
「ほんと何かと思えば…まあ、頑張んなよ。あと、これ以上傷増やしたら…。」
「わかってるよ!じゃ、ありがとな〜!」
次は…そうだ、あのモテモテカオルに聞けばなんかいい方法教えてくれるかも。
「月永くんだ〜珍しいじゃん?」
「おまえならなんかいい方法あるかと思ってさ〜。」
「女の子しか興味無いけど…噛み癖ねぇ〜欲求不満なんじゃない?」
「おぉ!なるほど」
「まあ、なんとも言えないけど。」
「いや、助かったよ。ありがとな!」
「うん、ばいば〜い♪」
あとはそうだな…オバちゃんとこでも言ってみるか。噛み付いたりしなさそうだけど。
「あ。月永くん、どうされました?」
「人はなんで噛み付くんだ?」
「またまた難解なことを…でも、なんででしょうね?衝動…?本能…?」
「動物的だな。」
「そうですね、人間も動物ってことでしょうね。」
「オバちゃんは噛み付いたりしないよな?」
「噛み付くほどのナニカがない限りは。」
「そうか…じゃあ、司はおれに噛み付きたくなるようなナニカがあるんだな!」
「え?月永くん、噛み付かれてるんですか?むしろ噛み付いてるのかと思って…あぁ、なるほど。頑張ってくださいね。」
「よくわかんないけど、ありがと!またなオバちゃん♪」
こんなもんでいっか。まずは帰ったらいっぱい遊んでやろう。
「ただいま〜。」
「おかえりなさいレオさん。」
「司、おれと遊ぼ!」
「遊ぶとは、なにをするんです?」
「ん〜そうだな…よっと。」
「わぁっ!」
「たかいたか〜い♪」
「なっ!つかさ、子どもじゃないんですよ?それに、あんまり高くないです。」
「じゃあ…ぐるぐる〜!」
「わぁあっ!」
「どう?これなら楽しい?」
「ち、ちょっとは…?」
「あとは何がいいかなぁ…?」
「遊んでくれるのでしたら、チェスはいかがです?」
「お!いいな!」
「レオさんには負けません♪」
二人でチェスを始めて、かれこれ二時間以上は経過している。勝てそうかな?と思ったら、そうでもなかった。なかなか手強い相手だ。勝負がついたのは、司のお腹がなったところからだった。
「司、お腹すいたの?」
「いいえ、すいてません。」
「今お腹鳴ったよ?」
「レオさん、今考えてるので静かにしてください。」
「はーい。」
「うーん…ここかな?」
「ん?おれ勝っちゃうな?」
「え?あっ!」
「わはは☆おれの勝ち〜♪」
「くあぁっ!もう一度勝負しましょう!」
「先にご飯食べてからな〜?」
「わかりました…いいでしょう。ちなみに今日のメニューはなんです?」
「今日は五目ご飯だよ。」
「美味しそうです♪」
「いっぱいお食べ♪」
「いただきます!」
「いただきまーす♪」
「おいし!おかわりするっ!」
「うんうん、まだあるからゆっくり食べるんだぞ〜?」
「はい♪」
「そういえば、帰ってきてから噛まれてないな…?」
「ん〜?なんですか?」
「司、噛まないの?」
「ご飯…おいしい、よく噛んで食べます。」
「いや、うん?そうだな?ちがうけど。」
「ん?」
「まあいっか!司のお腹が満たされればなんとかなりそうだし♪」
「はい♪」
司の噛み癖も無くなって、おれの身体中の歯型も消えた。ちょっと寂しい気もしなくもないけど、毎日かまってもらえて満たされているのか司はご機嫌だ。
「レオさん、レオさん、はやくつかさと遊んでください♪」
「わかったよ、ちょっと待って!」
「やだ。」
「んぅ!っはぁ、わかったから!今行くよ。」
歯型のかわりにキスされるようになったけど。まあ、むしろ司からしてくれるのは嬉しいし…。キスマークが増えてるのは…うん。見なかったことにしよう。
「レオさ〜ん?はやくー!」
「はーい!」
「もう、遅いですよ〜?」
「ごめんて。」
「つかさはレオさんがいないとだめなのに。」
「そんなに」
「よしよし、遊ぼうな?」
「いっぱい遊んでくださいね?」
「もちろん!」
「朝まで。」
「あ、朝まで…。」
治ってきたかと思ったけど、やっぱりこれは重症かもしれない。むしろ、噛み癖よりも…。