比較はできない■ボツネタ
「悪気があるわけじゃないと思うんだけどなあ」
オリジナルエックスがそうぼやく。
「ゼロはさ、エックスはボクじゃないんだから比べなきゃいいのに。エックスもエックスだ、どう考えてもゼロの言葉が足りてないんだから気にしなくていいと思うんだけどなあ」
「ちょっと、悪いんだけれど少し静かにしてもらえないかしら?」
モニターを注視したままシエルが釘を刺す。少し肩を落としてエックスは口を閉じた。
サイバーエルフの行動が遮断されるエリア内ではついて行きたくても叶わない。トレーラーからモニターするシエルの横で二人の現在地を見る。目的地までの到達度は五十パーセント弱。道程半ばといったところだ。経過時間を見るに存外苦戦しているらしい。片や試作機、片や汎用機といった不安要素しかないペアの上、そのリレーションは最悪と言っていいほどであるのだからシエルが張り付いてフォローするほど気を揉むのも仕方はない。
解除キーであるエックスは必須だが、ベースがデッドコピーでそれを改良しただけの機体にはかなり厳しい道程のはずだ。ゼロに至っては高稼働にならないようにわざわざ一部の機能を制限しているくらいで、性能面からみればどちらも似たか寄ったかのものだ。それでも行くしかない。キーが複製さえできれば、あるいは移植可能であれば、彼らを危ない目に遭わせる真似をしなくて済んだはずなのに。さもなければ、自分のボディさえあれば。幾ら考えたところで机上の空論だ。現実にはキーは複製も移植もできなかったし、自分のボディは失われて久しい。そして、そのことに関してだけは何一つ後悔していない。
「……二人とも大事なんだ。比べるなんてできやしないよ」