リーンカーネーション(再終/nowhere now here)「アンタはここにいるように見える。今この場ではそれは事実だ」
人間は首をかしげる。何を言っているのとでも言わんばかりだ。
「だって、きみの目の前にいて、ぼくがいないように見えるなんてことある? ここにいるのに?」
居るのが当たり前。アタリマエ、アタリマエ、と言い聞かせるように口の中で繰り返す。物理的に見えていなければおかしい。
それでもなお見えていないのであれば、確実に認識能力に何らかの異常がある証拠だ。
その異常を他人に意図的に起こすことができるのか? できないだろう。
「戻っていたんだな」
曖昧にそいつは頷いた。別に戻りたくて帰ってきたわけではない、とでも言いたげだ。
「考えるべきことがあって。それでもう一度きみたちのことを踏まえて、それから前に進もうと思ったんだ。……断っておくけど、きみや、きみたちのことについては一応の決着をつけたのだから、もうぼくがどうこうできることはないよ」
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